皆様に新年のご挨拶を申し上げます.本年もどうぞよろしくお願い申し上げます.
さて今年2017年の2017が素数ということで,それをお題に何か述べるべきかと存じまして一席講じます(なんで落語みたいになっているのでしょうか).
2017は4で割ると1余るので,ガウスの整数環 では2つの次数1の素イデアルの積に分解します.奇素数 が であることと,ガウスの整数環で分解することが同値であることは有名で,多くの方が触れているようです.2017は8で割っても1余ることを注意しておきます.
別の話題として,虚2次体 に注目してみましょう. の類数は です.(pari-gp だと quadclassunit(-2017) で, [12, [12], [Qfb(19, 8, 107)], 1] という結果が得られます.これは,類数が 12, 位数 12 の巡回群で,生成元となる2元2次形式が であると読みます.最後の 1 は単数基準で,虚2次体の場合はつねにそうです.)
実は,「虚2次体 の類数が 4 で割り切れるためには が必要十分条件」であることが知られています(Redei-Reichard).言い換えると,「虚2次体 の類数が 4 で割り切れるためには が で完全分解すること必要十分条件」.
「虚2次体 の類数が 2 で割り切れるためには が必要十分条件」はガウスの種の理論(を2次体の数論の言葉で述べたもの)から従うので,上に述べた事実はその精密化ということができるでしょう.この場合も,言い換えは「虚2次体 の類数が 2 で割り切れるためには が で完全分解すること必要十分条件」.
この調子で, の類数が 2冪で割り切れる条件が, の 2 冪での余りが 1, と言えるときれいですが,人生はそのようにsimpleではないのでした.素数17や97は ですが,, の類数は で,期待したように で割り切れてはいません.
この場合の必要十分条件は次のようになることが知られています(Barrucand and Cohn):「虚2次体 の類数が 16 で割り切れるためには となる整数 が存在することが必要十分条件」.さらに,「虚2次体 の類数が 16 で割り切れるためには, が で完全分解することが必要十分条件」.
例えばなどがそうで,この3っつについては の類数は 8 です.2017 は という表示を持ちませんが(全探索で分かります),それは の類数が 12 で,8 では割り切れないことと符合します.最近の年号だと, , もしくは が該当します. の類数は 24, の類数は 16です.
すると, の類数が2冪 で割り切れる必要十分条件が,有理数体上のガロア拡大 で素数 が完全分解することである,と言えるような,代数体 の存在を期待したくなります.このような体を「支配体(governing field)」と呼びます.
今回は , の類数の2冪での可除性のみ扱いましたが,判別式 を固定して,, の を動かした2次体の族について,その族のメンバーとなる2次体のイデアル類群 の 2冪ランク(2ランクは の体 上のベクトル空間としての次元,4ランクは の同じ次元)について考えます.
支配体については,山本芳彦先生の「数学」40巻2号,1988年,に掲載された論説をご覧ください(オンラインで参照できます).
幾つか誤植(平方根の記号の入れ忘れなど)を訂正し,山本先生の論説へのリンクを貼りました.誤植のご指摘ありがとうございました.
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