2010年12月31日金曜日

年末旅行・伊勢神宮参拝

年の瀬,30日から一泊で,三重県伊勢市へ.

往路は北陸道から東海北陸道を経て,名神,東名阪,伊勢自動車道と走っていくナビにお任せコース.東海北陸道では,最高で標高1,000mを越える箇所もある.最近の高速道路のサービスエリアは,ショッピングモールのようでもあり,東名阪の御在所SAのフードコートなど,昼時には戦場であった.

その日は,まっすぐ伊勢神宮内宮に向かい,寒い中を参拝.初めて来たけど,確かに聖域という感じではあった.そして寒かった.

宿は,大石屋という旅館.大きくはないが,設備は新しいし,禁煙フロアがあるし,前室も入れれば3部屋ある部屋で夕食も食べられたし,その食事も十分美味しかったので,大変好印象だった.



翌朝,やはり部屋で朝食を取ってから,近所の夫婦岩とそれをまつる神社を参拝.
From 2010年末・伊勢参り(二見浦)


大晦日のこの日は,折からの大寒波到来のため,山陰から北陸中部,太平洋側も荒天であった.帰路,三重県内で既に強風と吹雪に見舞われた.東海北陸道の標高の高いところはどんな状況かわからないので,滋賀県周りの経路を選択.新名神,名神から米原JCTを経て北陸道へ.ずっと道路状況が悪く,時には泊まってしまうような有様だった.

しかし,福井から石川へ向かうにつれ,天候も路面状況も改善していった.ちょっと皮肉な感じではあった.

家族で無事に年の瀬を迎えられ,ありがたいことである.

2010年10月21日木曜日

木曜日は講義二つ・金沢へ

木曜午前は,3年生向けの代数学の講義がある.昨年同様,中島匠一先生の「代数と数論の基礎 (共立講座21世紀の数学)」をテキストに,2章の「環と体」から始めた.ペース配分を考えながら着々と進めたいところ.

昼休みを挟んで,午後一に2年生向け線形代数学の続き.続き,というのは,月曜日の続きであり,つまり週に2回90分の講義がある(ので,半期で30回なのだ).Jordan標準形に向けて,体上の多項式の話を始めた.

線形代数学のコースがどんなものであるべきか,折々に考える.体上の加群と,それらの間の準同型写像の理論だというのが,狭義の線形代数学としよう.体上の加群は自由加群であること,依って線形写像は生成元(基底)の行き先で決まること(行列表示)が根本であろう.これらは多くの教科書で強調されるが,線形空間の双対性(双対空間の双対空間が,元の空間と自然に同型であること)はあまり触れられないようだ.

特定の体に依存する話はそれに続く各論と言うことになる.理論的・演繹的にどのように主題を並べるか,と言うことと,実際に講義する場合とで,何らかの違いが生じるか否か.数ベクトル空間や,行列の操作(基本変形や掃き出し法など)にどの程度の時間,ページ数を割くべきだろうか.

また,特に実数体,複素数体上の線形代数学は,コンピュータの上で具体的に計算することが広く行われている.厳密に計算できることもあれば,近似計算をする場合もある.伝統的な線形代数学のコースでは,こういった話題はあまり触れられない(掃き出し法やクラメールの公式などは使い処が限定される).云々.

夕方からは,金沢でのセミナへ向かう.まごまごしている間に,雨模様も手伝って高速バスを乗り逃がした.列車で移動し,15分ほど遅参.参加者の集まりが悪く,開始が遅れたので,冒頭から聴講できた.

類数が1の代数体は無数にあるか,と言う問題は,やや意外なことに未解決である.実2次体の中には類数が1であるものが無数にある,というのはGaussによる予想で,未解決である.これをずっと弱めて,奇素数を一つ固定して,この奇素数で類数が割りきれない実2次体は無数にあるか,あるとしたらどのくらいの密度であるか,と言う問題は,私が長く興味を持っている問題である.

一方,Weberに依るという,すべての2冪分体の最大実部分体の類数が1であろうというのも未解決だが,近年国内で進展があった.今回はこの問題に関する気鋭の研究者による講演だった.大変興味深く聴講した.

2010年10月18日月曜日

後期の講義;線形代数学II

後期の講義は,線形代数学II(2年生向け)と,代数学II(3年生向け).前者は週2回,月曜と木曜であり,後者も木曜である.木曜は隔週で金沢でのセミナがあり,やや忙しい.金曜にも不定期で講義がある(オムニバス形式なのだ).

線形代数学の講義は,前期を担当した同僚から引き継いだところ,正規行列が対角化可能であるとか,複素数体上の線形作用素のスペクトル理論とか,ほぼ一通り終わっているとのことだった.Jordan標準形から始めればいいのだが,教科書では証明が省かれており,しかも30回も講義回数があるとなると,時間余るように思われる.

なので,単因子論の前振りとして,整数行列のSmith標準形から話を始める.そのために,整数のEuclid性などから説き起こした.今日までの3回でSmith標準形が一段落.

応用として,有限(生成)Abel群の構造定理などを解説するのが定番だろうが,2年生向けと言うことで割愛.有限Abel群の当たり前でない(1の冪根の群など,巡回群でない)例で,2年生にも手短に説明できるものが思いつかなかった.2元2次形式の同値類を合成によって群と思ったものとか……?

種本は,木村達雄先生他の「代数の魅力」.

2010年6月8日火曜日

Epigraph of A. Weil, Basic Number Theory

A. WeilのBasic Number Theoryは,修士から博士にかけて,苦労しながら読んだテキストである.書名にBasicとはあるが,代数体と有限体上の1変数代数関数体のゼータ関数,L関数の理論や,類体論までを含む専門的なモノグラフである.

この本で,少し大げさに言えば,唯一読み残していた箇所がある.冒頭のForeword(序文)に付された,エピグラフである.昔から疑問に思っていたのだが,最近の機械翻訳やInternet検索の進展から,おおよその見当を付けることが出来た.

その一部始終を,twitterで呟いていたのを,twilogを経由して保存し,註釈を加えたのが以下のものである.註については,括弧書きにした.

きっかけは,Twitterにおける@SpringerJapanの人気コンテンツ,「今日の数学者」で,M. Zornが取り上げられたことである.Zornといえば,名を冠したレンマで有名だが,E. Artinの弟子であり,数論でも業績がある.以下twilogから.

今日の数学者が帰ってきた :) Zornは彼の有名な「レンマ」でだけ言及されることには,やや不満だったそうな.代数体上の単純多元環のゼータの仕事あり QT @SpringerJapan: 【今日の数学者】6月6日は「ツォルンの補題」で知られるツォルンの誕生日(1906年生)。


posted at 22:30:17


Zornが無くなったのは割と最近で(調べたら,1993/Mar/9),訃報が数セミに載ったのを見て,え?と思った記憶が.証明論が専門の先輩に,Zornのレンマが発見される以前は,例えばベクトル空間の基底の存在なんかはどうやって示してたんでしょう?と尋ねた.解答は忘れました :)


posted at 22:35:09



(註:Zornの仕事については,WeilのBasic Number Theoryでも触れられていたような気がしたのだが,探すと見つけられない…….)

A. Weil, Basic Number Theoryの序文のエピグラフの出典を特定しようと無駄な努力をした.なにしろギリシャ語全然分からないのに.


posted at 23:31:20



(註:Weil自身は,彼の自伝にもあるように,医師である父親がギリシャ語に堪能で,本人もリセ時代から古代ギリシャ語に親しんでいる).

でも,Google Translateを使って,「Αριθμόν, εξοχων σοφισμάτων. Αίσχ. Προμ. Δεσμ. 」が,「Number, super sophists. Shame. Suppliers. Bond.」だと言うことは分かった.


posted at 23:32:13


「Αίσχ. Προμ. Δεσμ. 」で調べると,Aeschylusの http://ow.ly/1UHCM (GBooks)というのが出てくる.でも,「Αριθμόν, εξοχων σοφισμάτων.」という文言は見つからない…….





posted at 23:36:49


杉浦先生訳の「著作集自註」の同書の箇所は,「この本の序文は,どのような事情でこの本が書かれたかを十分説明している.」なのだが,序文のエピグラフの出典についても明かして欲しかった.


posted at 23:44:54


と言うわけで,アイスキュロスの「縛られたプロメテウス」の,459行目「私は彼ら(人間)の為に,数学も創造した.最も重要な科学だ」 http://ow.ly/1UHRD でファイナルアンサー?


posted at 23:51:22



(註:分かってみれば,Weilの序文にも,Προμηθεύς Δεσμώτης / Promētheus Desmōtēs の略記があったのだった).

2010年5月5日水曜日

五箇山,城端

連休中の観光で,五箇山相倉集落と,城端町の市内を回る.

相倉集落は,ユネスコの世界遺産にも認定されている,合掌造りの家々が立ち並ぶ集落.観光地として整備されていて,逆に驚くほど.岐阜県側の白川郷が有名だが,こちらはもう少しこぢんまりした規模である.

日差しが強く暑い一日だったが,遅咲きの桜や花桃が咲き,遠くには雪で白く輝く人形山が望まれ,大変素晴らしかった.

城端では,曳山の準備が進められていて,所々で道路を曳かれる山車を見ることが出来た.

2010年4月14日水曜日

新年度学部ゼミ・初回

4年生のゼミも始動.今年は2人と,例年よりも小ぶりな規模である.昨年度後期,この学年の代数学を担当したので,難しいと敬遠されたのかな,と勘ぐる.

1人はその代数学を受講しており,もう1人は受講していなかったという.題材の選択に少し困ったけど,初等数論から始めることにした.

昨年度の代数学のテキストが,中島匠一先生の「代数と数論の基礎 (共立講座21世紀の数学)」だったので,その1章(講義は2章から始めた)を読む.5月の半ばから,ゼミ参加者のそれぞれが,やや時期をずらして教育実習に行ってしまう.それが終わってからが本番という段取りになるだろうか.

2010年4月12日月曜日

新年度修士ゼミ・初回

しばらくご無沙汰のこのブログ,新年度をきっかけに更新を再開したい.

今年度は,数学専攻全体で修士が14名.うち4名が私のゼミに所属する.3名は学部のゼミから持ち上がり,1名は別のゼミからの合流である.

春休みに間に,修士論文に向けて,これからの勉強の方針を立ててみたので,それを説明した.数学的な内容もさることながら,それなりの規模の(数十頁)作文をすることになる.そちらの方も,LaTeXなどの技術的なことと,より一般的に「読んで書く」ということとについて,参考文献を挙げた.

2年はそれほど長い時間ではないので,脇目を振らずに突進して頂きたい :)

2010年1月25日月曜日

√x まとめ

twitterで,√xについての一連のつぶやきに参加することが出来ました.なかなか得難い経験で,また内容的にも興味深く感じたので,まとめの頁をtogetterで作りました.簡単のため,以下にも埋め込んでおきます.

もともとの新井先生のつぶやきが,「まじで泣きそうになった」という表現で,多くの耳目を集めたものと思われます.少しやりとりの後,
(以下新井先生のつぶやき)みなさんは問題の所在を「教える内容」だと思っていますがそれは違います。彼らは、(1)4=x^2をみたすxを求めなさい、という問題には、正しく2,-2と回答する。(2)√4はいくつですか?と聞くと、2と正しく答える。(3)が、√xの定義はなんですか?と聞くと、二乗するとxになる数と答える論理的な破たんにあるのであって、「本来√はどのように教科書で定義すべきか」というような技術論ではありません。

と,核心となる点が明示されたように思います.詳細は,新井先生のblog記事にもあります.

また,話の流れを受けて,「数学ガール」シリーズの他多数の数学・プログラミング言語についての著作のある,結城浩さんが,「√xの定義についての対話」という文章を公開されました.数学の理解における産婆術というべきもので,同氏の面目躍如たるものがあると思いました.

数学の勉強をしていると,それまで自分が知っていたこと,経験してきたことと,新たに学んだことの間に不整合があるように感じる瞬間があるものです.これは,理解が不十分であることが露呈した瞬間で,そこで「考える」ことで,新しい知識を獲得するのみならず,既に知っていたと思っていたことへの理解が深まるものです.

そういった,自分の知識の内部にある不整合を意識して,考えることでそれを正していくというのは,高度に非自明なことのように思います.自然にそれが出来る人はごく少数でしょう.なので,中高での数学学習の際に,強調されるべきだという主張には,私は大いに賛成します.

それに適切な題材を見つけ,また教師側にも上のようなことを念頭に置いた上で指導を行う,というのが次にすべきことと思います.

少し別の論点ですが,定義を述べよ,というたぐいの質問に答えるのは,別の種類のスキルが必要だと思います.前後の文脈を補い,必要に応じて記号を導入して,正しく述べることです.

例えば「√xの定義を述べよ」と言われたときに,「xを実数とする」などのように文脈を補うこと,そして,xが正,0, 負の場合を尽くして,正しく解答する.

これは,数学科の4年次のセミナなどでも口を酸っぱくして指導することの一つです.

最近はメディアでも取り上げられることの多いtwitterですが,今回の一連のつぶやきは,それが実際どのようなものであるのかの,わかりやすい例になっていると思います.