2014年1月8日水曜日

紛らわしい

午前中は,文献読み.昨年11月下旬ぐらいに,落ち着いたら読もう,と借りた専門書を,年末から眺めていた.松の内も明けてようやく,何が書いてあるのかは分かってきた.

昼食を挟んで,午後は会議.思ったよりも早く終わったので,郵便局へ出かけたり,幾つか所用を済ませることもできた.

学科の図書室で数セミを眺めていたら,Szemerediについての記事が面白かった.当時のソビエトに留学するに当たって,

本当はA. Gelfondに就くつもりが,ミススペルでI. Gelfandに送られてしまい,Kazhdan, Margulis, Manin, Arnoldといった人たちと一緒のセミナーで何も理解できずにつらかった.………数学セミナー 2014年 01月号 : グラフ理論の新展開の徳重先生の記事から.

Szemerediについてはこのblogでも何度か触れていると思うが,組合せ論,グラフ理論から数論までに大きな足跡を残した数学者である.Gelfond(超越数論)とGelfand(表現論を始め極めて広い範囲で活躍した)とは紛らわしいが,そんなことが本当にあるのか,という印象で大変おかしい.

そして,Kazhdan, Margulis, Manin, Arnoldといった人たちは,ごく控えめに言っても20世紀の巨人たちであって,そういう人たちが同じセミナーで切磋琢磨していたというのも,ものすごい話である.

詳細は,Notices of AMSのSzemerediへのインタビュー記事にある.


2014年1月7日火曜日

平和と繁栄

新年のご挨拶を申し上げます.本年もどうぞよろしくお願い致します.

1限目は1年生向け線型代数.今月4回やると,もう期末試験である.線型空間(ベクトル空間)の公理的な取り扱いを始めたので,ゆっくり目に説明する.

2限目は大学院の代数学.昨年末から圏論の初歩的な話題を扱っていて,今回は米田の補題の証明から.更に,無限次のGalois理論を圏の言葉で述べるバージョンを,結果だけ述べて時間切れ.

昼食を挟んで,午後はM1ゼミ.Ireland-Rosenの14章で,Eisensteinの相互法則やStickelbergerの定理など,こちらも結果を述べるところまでで時間切れ.

ゼミ室が寒いとか,最近は陽が射して外のほうが暖かいとかの雑談のおりに,Stickelbergerの定理(Stickelberger元という,円分体のGalois群の群環の特別な元が,イデアル類群を消す,という定理)から,岩澤理論というものがあって~,という話になる.また,Eisensteinの相互法則の応用として,Fermat予想の第1の場合に対するMirimanoffの判定法が得られるが(Irerand-Rosenの当該箇所に,それを含むFurtwänglerの定理が証明されている),Fermat予想そのものの解決も,やはり岩澤理論の強い影響下でなされた,というような話もする.

1960年前後から50年少々で,数論における様々な大問題が解決されてきたが,それはどうしてなのか,というと,やはりそれが可能になるような,平和と繁栄があったからではないか.やはり平和が大事だ,というような話もした.

世の中の平和も大事だが,やはりそれは個々人の胸の内に平和がないとなされないであろう.

夕方,図書室で新着図書をながめていたら,斎藤毅先生の「Fermat予想」の英語版(の前半)が入っていた.


Fermat's Last Theorem: Basic Tools (Translations of Mathematical Monographs)
Takeshi Saito
Amer Mathematical Society
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