2008年7月30日水曜日

火曜日の講義:大学院と4年生ゼミ・最終回

大学院講義は最終回。結論は、二次体における素数の分解法則。円分体での分解法則には言及できなかった。残念。

午後の4年生ゼミは、さんざん発破をかけまくって、小野孝先生の「数論序説」の1章まで終了。ガウスの相互律までである。普段は17時前に終わるのだが、今回は、終わってみたら18時を回っていた。きりのいいところまで読んだけど、夏休み明けにすっかり忘れて帰ってくるのが目に見えるようだ :)

2008年7月29日火曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理・最終回は暗号

自然と情報の数理の最終回。前回の次回予告では、微積分学を取り上げるつもりだった。しかし一回の尺で収めるにはテーマが大きすぎるようで、手が止まってしまう。

数学が現代の社会で役に立っているという実例の一つとして、現代の暗号を取り上げることにした。話の構成はありきたりだが、シーザー暗号、頻度解析、ヴィジュネル暗号、公開鍵暗号といったところ。

ヴィジュネル暗号の解読法を、バベッジ(階差機関や解析機関の人)が編み出していたという話は大変面白い。

今回のネタ本は、定番ながら、サイモン・シンの「暗号解読 上巻 (1) (新潮文庫 シ 37-2)」、「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」。包括的に、しかも内容にも踏み込んでいて、大変読ませる。未読の方にはお勧めです。








久々に山歩き:蓮華温泉から白馬大池

日曜日は久々に山歩き。梅雨も明けたし、夏山シーズンです。登り三時間少々の、蓮華温泉から白馬大池までのコース。所属山岳会のメンバで、私を入れて4名。

朝5時集合、蓮華温泉から歩き出したのは七時半ごろ。大池には10時半ごろ到着。
11時半ごろに下山にかかり、途中土砂降りになってしまって、蓮華温泉に戻ったのが午後2時前。

ほんとに歩けるか、少々不安だったものの、特に支障なく降りてこられて一安心。
でも夏山の怖さ。下山の際に、午後1時過ぎから土砂降りの雷雨。
すでに樹林帯まで降りていたものの、やはり雷は怖い。
稜線を歩いている人もたくさんいただろうから、彼ら・彼女らは気が気でなかったろうなぁ。

入浴は姫川温泉にて。以前も来たことがあるけど、鄙びた様子に拍車がかかっているような……。

2008年7月24日木曜日

水曜日だけど月曜日:自然と情報の数理・方程式論の700年

月曜日が海の日でお休みだったので、水曜日が月曜の時間割。今回の自然と情報の数理では、方程式論を取り上げた。

2つの円錐曲線の交点として、3次、4次方程式の解が得られるというのは、12~13世紀のイスラム数学者に知られていた。これは現代の目で見ても興味深い事実。

一方で、解の公式が発見されるのは16世紀。更に、方程式を解くというのがどういうことなのかが詳細に検討され(ラグランジュ)、群論の萌芽へとつながる。そしてアーベルとガロアによる決定的な結果がもたらされる。実際には、その仕事が広く理解されるようになるまでもう少し時間がかかるのだが、その辺は割愛。


2008年7月23日水曜日

火曜日の講義:大学院と4年生ゼミ

大学院の講義。二次体と円分体の整数環、整数底、判別式など。少なくともこれらの体での素数の分解法則くらいは解説したいところだ。

4年生ゼミは、代数的整数の環が導入され、また相互法則の証明に向けて、アーベル群の指標を定義。直交性など基本的事実を確認。前期のうちに、相互法則の証明はなんとかカバーできそう。

2008年7月19日土曜日

木曜日はセミナ:100円PC

木曜日隔週の隣町でのセミナ。今回は同僚某氏に講演を依頼。

セミナの常連メンバの某氏が、100円Eee PC、というもの持参していたので見せていただく。PCそのものは、量販店の店頭で見たことがあり、その際は、いわゆるノートPCと比べると見劣りがする印象だった。しかし実際に使う状況で見てみれば、それなりに使えてしまうようにも見えた。

ネットトップというジャンルのノートPC市場が急速に立ち上がりつつあり、私自身はその推移を興味深く見守っている、というところである。5万円を切れば手を出すという層が存在することが分かったわけで、メーカも黙ってはいまい。

更に移動体通信を商売にする会社が興味を示すのは当然である。上述の100円PCのように、5万円を切る価格の端末ならば、無料のような値段で配っても、回線使用料に広く薄く転嫁して回収することが出来る。携帯電話会社がやってきたことである。インターネットプロバイダだって同じようなことをはじめるかもしれない。

このサイズのノートPC(ネットトップ・ネットブック)が、家電量販店で買ってくるものではなく、携帯電話小売店やオンライン通販で「機種変」するものになるというのは十分ありそうな話である。

面白くないのは、従来のPCメーカ(普通のPCが売れなくなる)、Microsoft, Intelあたりだろうけど、そもそも家庭向けPC市場は、飽和状態にいたってもう数年経っているように見える。


2008年7月15日火曜日

月曜日の講義:自然と情報の数理・イスラム圏の数学他

イスラム圏の数学の幾つかの結果を眺める.

まず冪和の公式.カラジーによる,1^3+2^3+3^3+...+10^3 = (1+2+3+...+10)^2 の証明.初等的な(正方形の面積と,グノーモンの面積の)考察から鮮やかに結果を導く.更に,ハイサムによる結果は,3乗和に限らず,k乗和の公式を帰納的に求めることが出来るものである.17世紀のBernoulliの結果に先立つこと500年以上である.

次いで,2項定理と数三角形(別名,パスカルの三角形)の話.これも,インドや中国では古くから知られていた.パスカルはむしろ,最後の発見者と言っても良いくらいかもしれないが,数学的帰納法を現在の形に書いた功績によって名が残っているのだと納得しても良い.

最後に,ハイヤームらの3次方程式の解法(円錐曲線の交点として)を話す予定だったが,時間切れだった.

ルネッサンス期の数学に直結するような結果が多数見られ,大変興味深い.
今回もカッツの「カッツ 数学の歴史」に大いに依存した.



2008年7月9日水曜日

火曜日の講義:大学院と4年生ゼミ

大学院講義は、円分体(素数分体の場合のみ)の基本的なこと。判別式や、部分体の計算などを紹介した。

4年生のゼミでは、一応Silvermanのtaxi cab numberに関する論説を終了。後は小野孝先生の数論序説の続きで、原始根のあたり。

月曜日の授業:自然と情報の数理・中世までの世界

ギリシャ・ローマ世界を後にした。中世までの世界各地の様子をざっと眺めて、各地の各時代でどんな数学が行われていたかを瞥見しようと思ったけど、さすがに荷が重かった。インド、イスラム、中国の10~11世紀ごろまでの歴史を超要約するので精一杯。

主だった数学については次回触れて、ルネッサンスにヨーロッパで数学が復興する話をしたい。
準備がますます大変な昨今です。包括的に一冊にまとまった本として、「カッツ 数学の歴史」が大変便利。

今回は、11世紀終盤から12世紀に活躍したとされる、オマル・ハイヤームの名前が出てくる。放物線と円の交点として三次方程式を解いたりしていて驚く(この方法で三次方程式を解くのは、歴史上何度が行われている。角の三等分も、コンパスと定規に方法を限らなければ出来るということも知られていた)。

ハイヤームの「ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)」は、中学生の頃にたまたま読んだ。私たちは皆、明日をも知れぬ身なのだから、せめては旨い酒を飲んで今夜は楽しく過ごしましょう、という、厭世的とも刹那的とも言えるが、大変印象深い四行詩集である。そういうものを読んで興じている中学生を見て、流石に親は心配していたようである。






2008年7月3日木曜日

木曜日はセミナ:Sage紹介

隔週の隣町でのセミナ.今回はスピーカを仰せつかり,Sageの紹介をした.

Sageは,W. Steinさんを中心として開発が進められている,オープンソースの数学用ソフトウエア.既存のソフト(pari/gp, GAP, singular, maxima,...)を構成要素として,Pythonで一つにまとめたような作り.プログラムは実質Pythonで書くことになる.

詳しくは以下のプレゼン資料をご高覧下さい.

火曜日の講義:大学院と4年ゼミ

大学院講義は,円の素数分体の初歩的な話と,トレース,ノルム,判別式など.素数分体はGalois群がよく分かるので部分体もよく分かるが,更に有理数体上の生成元をGauss和で書く(Gauss周期)のが目標だがもちろん一回ではそこまで話せなかった.

4年生のゼミは多項式の話.体上の多項式環がユークリッド整域ということだけど,なんだか難航していた.毎年やってるじゃないか,とこちらは思うが,学生は毎年入れ替わっているので,それは詮無いことである.

月曜日の授業:自然と情報の数理・アルキメデス以降のギリシャ数学

アルキメデス以降のギリシャ数学をざっと概観する回.エラトステネスやアポロニウスはもちろんのこと,パッポスとかメネラウスとか,高校生の頃に聞いたような名前が出てくる.

世界史的にも,ローマが共和制から帝政に移り最大版図を誇る激動の時代であり,キリスト教が普及していく時期でもあり,大変興味深い.

プトレマイオスのアルマゲスト(コペルニクスの頃まで,天文学の典拠資料だった)とか,ディオファントスの「算術」(バシェのラテン語訳に,フェルマーが残した注釈が,いわゆるフェルマーの最終定理の発端だった)など,ヨーロッパの中世が射程に入ってくる印象である.

次回はイスラム圏,インドの数学をやるつもりだけど,ギリシャ・ローマ社会と違って予備知識がほとんどないので苦労しそうだ.