2008年4月29日火曜日

書評:坪田一男「理系のための人生設計ガイド」

坪田一男著「理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス 1596)」を先日購入して読了。

ブルーバックスの本書のページから、目次:
設計1 基礎知識編 成功のためには人生設計が必要だ
設計2 自己分析編 「自分年表」で人生を仮説にする
設計3 経済編 研究者こそ経済的自立が必要だ
設計4 友人・知人編 人的ネットワークを増やすには
設計5 海外ネットワーク編 世界で認められる研究者になる
設計6 ポスト編 母校の教授になるために
設計7 業績向上編 ノーベル賞を狙う気持ちで研究する
設計8 表現編 表現力をつけて社会にアピールする
設計9 インフラ編 会社、学会、NPOを用意する
設計10 時間編 人生設計とは「時間をどう使うか」である
設計11 トラブル編 理系の弱点「危機管理能力」を備えよう


同じ著者の「理系のための研究生活ガイド―テーマの選び方から留学の手続きまで (ブルーバックス)」を大分以前に読んで、それなりに納得させられるところがありました。同書が研究室の中での指針を示している(書名どおり、「研究生活ガイド」)であるのに対し、「人生設計ガイド」は、より広い視野で、研究者としての人生について、一つのあり方を提示したものです。

冒頭p.18, 「良い研究を続けて、それを成功へと導くためには、若いうちからそれなりに道筋を考えて、ある程度の準備を少しずつ進めていくほうがいい」というのが、全体を貫く縦糸でしょう。また、p.22, 「研究に際して、僕たち理系は大まかにゴールを設定し、実験や分析をしながら論理構築をしていく作業を行うだろう。この作業を、自分の人生に当てはめて考えてほしい。その作業こそが「人生設計」なのだ」ともあります。

二章以降は、人生設計とその実現に向けての各論になります。そもそも、自分の研究者人生におけるゴールは何か。本書で言う、バリュー、ミッション、ストラテジーを明確にすることから話が始まります。そしてそれらを現実の世の中で達成することを目標に,より具体的な達成目標へとブレークダウンしていきます。

表題に謳う「理系のための」は,より正確には,「医薬系の」です。理工系でも,ラボで研究するタイプの分野なら割と近いでしょう。逆に,数学や理論物理など,研究の単位が一個人に近いレベルでは,多少調節が必要になります。また,いわゆる文系の場合はだいぶ様子が異なってくるでしょう。

研究者として人生を送っていくにあたって,具体的,実際的なアドバイスを述べた本としては,古くは本多清六から,昭和に入って,渡部昇一の「知的生活の方法 (講談社現代新書 436)」や鷲田小彌太「新 大学教授になる方法」など,多数あります.本書はその流れの中で,最近の一書として出色と思います。

炊飯器を買い替え

今まで使っていた炊飯器は、3合炊きの小さなもの。
当地に越してきたときに購入した1人暮らし用であった。

お客さんが来たときなど、容量不足が目に見えているので、10年ぶりに買い替えました。

最近の炊飯器の動向などを日ごろからウォッチしてはいないので、にわか仕込みで勉強。
昔ながらの電気式炊飯器もあるものの、IH方式や圧力炊き対応といった新機軸が打ち出されているらしい。容量も、5.5合炊きや8.5合炊きなど細かくなっている。
容量によって価格は違うが、5合炊きで5万円前後ならハイエンドと見た。

そのくらいの理解で、後は電気屋の店頭で値段を見て、決めることに。
近所のJoshinに行って、一番の売れ筋を店員に聞く。
松下改めパナソニックの10万円台の製品が1番よく出るという。
嘘はいかんですよ?と思ったが、案外そういう土地柄かもしれない。

結局、2番目に良く出るという東芝の製品に決定。TOSHIBA 真空圧力 IH保温釜 真空圧力炊きV・VIP シャイニングシルバー RC-10VSA(SS)であります。メーカーのページはこちら。59,800円の値札だったが、ポイントなしで、57,000円で手を打った。

買って帰った当日の夕食は、持ち寄りのホームパーティだったので、炊飯器の出番なし。
翌朝も、パーティの余りのお握りや押し寿司で済んでしまった。
そんなわけで、買った翌日の夕食が、デビュー戦。

まず設置面積が、これまでの3合炊きと比べるとでかい。当たり前だけど。
スイッチを押してしばらく見守っていると、割と作動音が気になる。
ポンプで奪気したり、圧力鍋で加圧したりと、忙しそう。

炊き上がったご飯の粒の見た目がはっきりしているのが第一印象。米粒が煮崩れていない。
噛んだ歯ごたえが感じられるが、硬いというわけではない。しっかりと火が通っている。
大変おいしく感じた。

翌朝も改めて炊きなおし。本来は、保温の際にも風味が落ちないのが売りなのだけど、毎回食べる分だけ炊く流儀なのだ。今回は家人が水加減を微調整したので、昨晩より軟らかい歯ざわり。しかしやはりおいしいのだった。(ちなみに米は、2週間分を精米しているコシヒカリ)。

玄米や発芽玄米、雑穀を混ぜたご飯などなど、さまざまな機能はまだ試していません。そのうち試してみたいところ。

炊飯器に6万円弱を出すかは、人によると思うので、手放しで薦めるわけではない。
私は大変良い買い物をしたと納得しました。

2008年4月25日金曜日

木曜日はセミナ&Gaussの和 Poincareの和

昨日木曜日は隣町でセミナ.移動は,高速バスで1時間である.車中でメンバの一人と一緒になって雑談.小野孝先生の「ガウスの和ポアンカレの和―数論の最前線から」がちょっと話題にのぼる.

会場に早めに着くと,別のセミナ(幾何方面)で部屋が塞がっているので,別室で作業をしながら待機.まもなく終了した.この会場は交通の便がよいので,競争が激しいそうだ.

やがて参加者が三々五々集まる.セミナが始まる前の雑談で,再び小野先生の上掲書の話題.私もしばらく前に購入して,前半はざっと目を通した.1986年~1987年に数セミに連載した記事を収録したとのこと.別記事で感想をまとめようと思う.

講演を聴いて,Siegel保型形式も楽しそうだ,との思いを新たにした.終了後はメンバで夕食を取って解散.再び高速バスで帰る.

2008年4月22日火曜日

大学院講義&4年生ゼミ

大学院の講義は,環論の復習の途中まで.せいぜい代数体の整数環位しか出てこないので,必要最低限で.イデアルによる剰余環で時間切れ.

午後は4年生ゼミ.算術の基本定理とか,連分数とかのお話.

来週の火曜日は休日と思って油断していたら,その週の金曜日が火曜の時間割とのこと.それは……裏をかかれた(学期開始頃配られた学年歴にはその記載があるが).


関係ないが,梨木香歩「西の魔女が死んだ (新潮文庫)」が映画化されるらしい.定評ある名作の映画化ということで,期待半分不安半分という印象です.原作の終盤,涙ぼろぼろで読了しました.webに写っている魔女の住み処は,原作の雰囲気をよく再現して居るなぁと思いました.

月曜の授業:自然と情報の数理

他学部向けの教養科目「自然と情報の数理」二回目。
既に履修登録期間は終了しているので、受講生の人数が確定した。24名とのこと。
以前担当した同僚に聞くと、もう少し多かった年もあるようだ。シラバスに数学の話を前面に押し出したようなことを書いたのが効いたのか、思ったより少ない。そのほうがやりやすい。

今回は無事プロジェクタにもつながり、滞りなく実施。授業中に出席代わりのクイズを実施したり(エジプト分数の計算)。

スライドは以下のもの。ギリシャ三大難問を解説したところで時間切れ。次回に持ち越しとなった。



数学に関する歴史に言及するときには、できるだけ当時の世界の状況にも触れようと考えている。wikipediaほか、webの検索でも情報は集まるが、手元に資料も置きたいので、宮崎正勝「
スーパービジュアル版 早わかり世界史」なんてのを買った。この本にしたのは、生協の店頭にあったという以上の理由はなし。

2008年4月16日水曜日

火曜日の講義:代数学特論Bと4年生ゼミ

今週から前期の講義が開始。火曜日の午前中に、大学院向けの「代数学特論B」。
内容は、2次体と円分体を中心にした代数的整数論の紹介の予定。小野孝先生の「数論序説」や、藤崎・森田・山本の三先生の「数論への出発」などを下敷きに、易しい話をしたいと考えている。受講する学生諸君は、みな解析や幾何が専門なので、深入りはできない。

初回はオリエンテーションと、群論の復習。大学院の講義の初回が群の定義で始まるのは、学生時代の指導教官譲りかもしれない。正規部分群による商群まで。

午後は4年生のゼミ。上掲の小野先生の本がテキスト。ぼちぼちとやっていきましょう。

2008年4月14日月曜日

授業開始:自然と情報の数理

主に文系の新入生向けの教養科目「自然と情報の数理」の授業開始.
プロジェクタでプレゼンテーションを投影しながらの授業のつもりだったが,PCとプロジェクタとが互いを認識しない.そんなこともあろうかと,板書で授業(代替措置は常にローテク).

板書している時間があるので,ついでに,いろいろと脱線しておしゃべりしていたので,予定の半分程度の進捗だった.オリエンテーションということで,実質の内容には踏み込まなかったが,どの程度の受講登録があるか.

用意していたプレゼンテーションを貼っておく:



(4/15後記:編集途中のバージョンを公開していたので,差し替え.)

2008年4月9日水曜日

You've got to find what you love (S. Jobs)

大学院の新入生向けの数学専攻オリエンテーションが本日開催.新入生は6名.
私は情報機器・インターネット関連の説明ということで,注意事項をメモにしたものを配布し,口頭で説明.

メモはGoogle Docsでさらさらと作り,何気なく印刷したのだが,配布する段になって書体が変なのに気がつきびっくり.中国語のような書体に見える.

オリエンテーションが終わってからもう一度じっくり手順を繰り返すと,Google Docsの印刷は,PDFがダウンロードされ,それが印刷されている事が分かった.作成した文書をPDFでダウンロードし,保存することも出来るので,そのファイルのフォント情報を見てみると,日本語はMinLiU(リンクは,電脳瓦崗寨というサイト)という書体である.台湾版Windowsの標準書体とな.

印刷の際に書体を指定できるのか少し調査.一番簡単なのは,OOo Writerの文書としてダウンロードし,印刷の際に調整すればよい.Google Docsが,文書のエンコーディングを判断して,日本語かつUnicodeならこの書体にしてしまうようだ(himazu memo 2.0の該当エントリ).

一連の調査の過程で,S. JobsのStanford大での卒業式祝辞今津訳に遭遇.こちらが原文.このblog記事のタイトルも,それが出典である.大学院新入生諸君には,コンピュータやインターネットがどうこう以前に,こういったスピーチに接して欲しい.

このスピーチは,一つ前のエントリで挙げた,梅田望夫「ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!」で掉尾を飾っていたと思う.

後記:Jobsのスピーチは、iTunes UのStanford大で公開されてる.iTunes U>Stanford>Campus Life>Commencement - Audioと辿って下さい.

2008年4月8日火曜日

Betting against the net is foolish (E. Schmidt)

タイトルは、梅田望夫さんの「ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!」のp. 139から。Eric Schmidtはいわずと知れたGoogle CEO.

遅きに失するの感はありますが、自民党が「青少年の健全な育成のためのインターネット利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案骨子(案)」というものを策定しようとしており、また民主党もほぼ同内容の法案を作っているとの動きを知らせる報道にようやく接しました。

CNETの日本のインターネット産業に大きな節目?--自民と民主が重要法案を準備という記事と、ダイヤモンド・オンラインのネット規制にばく進する自民党 「有害情報」を流せば懲役刑も|経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”|ダイヤモンド・オンラインをリンクします。CNET Japanの記事のほうには、他のwebへのリンクがあるので、そちらもご参考に。

「青少年を有害情報から守る」という大義名分はあまりにも危険で、これを振りかざす人を信頼することはできないと思います。正しくは、

「良い人々がより良く振舞えるようにする環境づくりを、本気で考えなければならないと思う。同時にネガティブな人々のもたらす影響を弱めて小さくすることも重要だ」(Pierre Omidyar, eBay創業者。上掲書p. 231)。

2008年4月3日木曜日

Google Docsがoff-lineをサポート

Google Docsはweb上に実装されたOffice suiteです.ワードプロセッサ,表計算,プレゼンテーション用のソフトが提供されています.

Microsoft OfficeやOpenOffice.orgをはじめとした,ソフトウエアパッケージとして提供されるものと比べると機能はまだ足りないですが,基本的な事は出来ます.

問題は,当たり前ながら,Internetに接続していないとどうにもならないこと.この問題が,off-line機能の提供により解決されたようです.ようです,というのは,off-line機能の提供が3/31から始まったばかりで,まだすべてのユーザに使えるようになっていないから(私も未だ使えません).

さし当たり,YouTubeに投稿された紹介ビデオでも見て待ってます:


それにしても,MacBookをむき出しで自転車の籠に乗せて走るというのには度肝を抜かれる.