2013年5月28日火曜日

まずぐぐる

午前中はM2ゼミ.教科書を卒業して,論文・論説に取りかかってみたが,いろいろと前途遼遠という印象だった.さしあたり必要になるであろう論文を集めに出かけて,文献の探し方をレクチャーしたり,見つけたものをダウンロードして整理したりする.

探し方と言っても,手持ちの文献の文献表を見つつ,「まずぐぐる」,「隣のタブでMathSciNet」とか,かなりイージーである.

文献と言えば,Elsevierへのボイコットがあったのは去年の2月頃である.最近のGowersのblogの記事「Elsevier journals: has anything changed?」に依れば,JNTのあるエディターが辞任したそうである.詳細については同記事を読んでいただきたい.

昼食を挟んで,午後はM1ゼミ.Ireland-Rosenの本で,4乗剰余記号の相互法則の証明を読む.相互法則を証明したら,ではガウスの整数環の,ノルムが $100$ 以下の素元 $\lambda$, $\mu$ に対して,$(\lambda/\mu)_4$ を計算しましょう,計算ドリル!という宿題を出そうと思っていたけど,終わったらくたびれていて出し忘れた.

夕方から小雨がぱらつきだして,じめじめするけど体が冷える感じ.帰宅してすぐに風呂に入った.

2013年5月27日月曜日

手紙だと思って

月曜日の1限の線型代数.2次元の場合の行列式,3次元の場合の外積,そして3次元の平行体の体積あたりまで,その他の話題.

小テストの解答の仕方について,ふつうの日本語を書くように,つまり,何がどうしたのか,その理由は何なのか,等々が読み取れるように書きましょう,答案を読む人への手紙だと思って書きましょう,というようなお話をした.

数学についての日本語を書くに当たっては,結城浩さんの「数学文章作法 基礎編 (ちくま学芸文庫)」をお勧めする,という話もしたが,上のようなことならむしろ,数学ガールの秘密のノート第3回,連立方程式のアピール,のほうが近かったかもしれない.

さらに,同氏の「数学ガール (数学ガールシリーズ 1)」とその一連の続巻も,本格的な数学の本である事,また,ちくま学芸文庫は,数学や物理の本格的な本がたくさん揃っている不思議なシリーズなので,それぞれ見かけたらぜひ手に取ってみるように,と勧めておいた.

終わって,小テストをソートして出欠を集計するところまで済ませて,学内のカフェに脱出した.居室は蒸し暑いが,ここなら空調が効いているのである.ちょっと数値計算の続きをする.

午後のM2ゼミは,スピーカ氏の都合で翌日へ延期されたので,さらに自分の仕事の続き.


数学文章作法 基礎編 (ちくま学芸文庫)
結城 浩
筑摩書房
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2013年5月25日土曜日

連続する冪剰余の列

金,土と,木曜日の金沢でのセミナで聞いた話を数値的に追試していた.$p$ を $3$ で割って $1$ 余る素数としたときに,法 $p$ で $0$ でない元の代表系 $R = \{1,\dots, p-1\}$ の中に,$3$ 乗剰余(つまり,$a\in R$ で,$x^3 = a \pmod{p}$ となる $x\in R$ が存在するような $a$)の連続列がどのくらい存在するかを考えるのである.

例えば,$p = 1009$ とすると,$\{182, 183, \dots, 186\}$ の5つが連続した $3$ 乗剰余であり,これを,$3$ 乗剰余の長さ $5$ の連続列と言っている.同様に $\{823, \dots, 827 \}$ も5つの連続した $3$ 乗剰余である.長さが5の列はこの2つしかない.長さが6かそれより大きい列はない.長さが4のものは6つある(但し,長さは「丁度4」のものを考える.長さ5の列には長さ4の部分列が2つ含まれるが(つまり $\{182,\dots, 185\}$ と $\{183, \dots , 186\}$ これらは長さ4には含めない).

法 $p$ についての連続する $k$ 乗剰余についての考察はたくさんあり,指標和の評価に依るもの,自然数の彩色に関する van der Waerden の定理のように組合せ論の手法をとるもの($3$ 乗剰余で類別することは,自然数を $3$ 色に塗り分けることに相当し,連続する列というのは公差が $1$ の等差数列である),様々な先行研究があるようだ.

暑い一日だった.炎天下,側溝の泥を掻き出して麻袋(実際には化繊だが)に積めたり,汚水枡に薬液を流したりと少し家の周りのこともした.

2013年5月21日火曜日

きれ

午前中は,ゼミの院生向けに一コマお話.講義というほど堅苦しくなく,そもそも単位も出ない自主ゼミのようなもの.

昼食を挟んで,午後はM1のゼミ.Ireland-Rosen, A Classical Introduction to Modern Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)の4乗剰余記号のあたりに入って,でも,相互法則の証明は次週に回すという.Gauss自身がこの発見について記録した論文が,邦訳されている(ガウス 数論論文集 (ちくま学芸文庫))ので,彼らに紹介しておく.

すでに蒸し暑く,夕方になると体にきれがない(朝方にあるとは主張していない).

2013年5月20日月曜日

錯覚から自らを解放するために

月曜1限1年生向けの線型代数は,3次元空間での線型変換など.具体例として,回転や射影を扱う.次回以降,3次の正方行列の行列式を扱うのだが,「数学セミナー 2013年6月号 ベクトル・行列が見せるもの」の当該特集を受講者諸君に勧めてみた.「数学セミナー」という雑誌を知っていたのは,4~5名という印象だった. 

出席を確認するのと,理解度を見るために,毎回小テストを実施する.教科書の本文中の問を,15分ほどでできるところまで解いてもらう.成績には反映させない(出席も,小テストのでき具合も).これは非常によい方法と自負している.正しいことをしゃべれば,受講者が理解する,という錯覚から自らを解放するために. 

午前の残りの時間は,小テストの集計とコメントに使う.てにをはの整った,読める文章を書いてください,というのが一番多いコメントで,これはもう判子を作りたいくらいだ.判子を作るための小さな3Dプリンタなど商品化されないだろうか.

昼食を挟んで,午後はM2ゼミ.先週の水曜日に引き続き,小野孝先生の「数論序説」の2章の終わりあたりを読む.2次体のArtin写像と,特にそのkernelの決定まで.Dirichletの算術級数定理の証明は3章以降なので,それは認めて使う.考えている2次体で分解する素数が存在することが,それで保証される.2章まで終わったので,別の文献に移ることも含め,今後の方針を話し合った.

2013年5月14日火曜日

3項Goldbach予想,双子素数

午前中,自分のゼミの院生向けに,内輪の講義.勉強するきっかけになればと思い,代数的整数論から話題を選んでざっくりとお話しするという催しを始めた.

昼食を挟んで,もう一度,今度はM2のゼミだと思ったが,連絡の行き違いで今日ではないと思っていたという.仕方ないので延期して,午後は時間ができた.

3項Goldbach予想が解決されたらしい,というので,プレプリントarXiv:1305.2897)を見てみる.今回証明された(らしい)のは,「5以上のより真に大きい奇数は,三つの素数の和である」,という主張である.もう一つの,「2以上のより真に大きい偶数は,二つの素数の和である」のほうは未解決.(2013/05/18記:「以上」は等号を含むので訂正しました).

3項Goldbach予想は,既に1937年にI. M. Vinogradovによって,「ある正の定数 $C$ が存在して,$C$ より大きい奇数は三つの素数の和である」ことが証明されていた.このときは $C$ は不明だったが,その後,$C$ がいくつにとれるか,という線で研究が進んできた.

例えば2002年には,$C = e^{3100}$ ととれることが示されていた.したがって,$e^{3100}$ 以下の奇数について(それらはとにかく有限個だから),三つの素数の和である事を示せば,3項Goldbach予想を示したことになる.問題は,$e^{3100}$ が巨大すぎることである.

今回のHelfgottの結果は,$C=10^{30}$ ととれることを示した.そして,この $C$ より小さい奇数が三つの素数の和である事は,コンピュータで個別に確かめた(2013/05/18記:個々の数に対して逐一確かめたわけではないです.H.A. Helfgott, David J. Platt, Numerical Verification of the Ternary Goldbach Conjecture up to 8.875e30, http://arxiv.org/abs/1305.3062 参照).この $C$ より大きい奇数については,三つの素数の和である事を理論的に証明した.これにより3項Goldbach予想は証明された,ということらしい.

繰り返しになるが,「2以上の偶数は,二つの素数の和である」のほうは未解決である.T. TaoのGoogle Plusへの投稿なども参照.

さて偶然ながら,同じ日に同じ解析数論で,もう一つ大きな進展があったらしい.$(3, \, 5)$, $(5, \,7)$, $(11,\, 13)$ のように,$p$ も $p+2$ も素数であるような,言い換えると,差が2であるような素数のペアを双子素数という.「双子素数は無数にある」というのは古典的な未解決問題であった.

今回アナウンスされたのは,「差が70,000,000以下の,相異なる素数のペアが無数に存在する」という結果である.こちらはプレプリントなどは公開されていないようだ.情報源としては,著名なblog "Not Even Wrong" のこの記事が挙げられる.Natureにも記事がでている.

著者のZhangは,Annals of Mathからの査読報告を上記Natureの記者に見せているそうで,それによれば "We are very happy to strongly recommend acceptance of the paper for publication in the Annals." ということらしい.


数学はとどまっていない,という有名な台詞を思い出しますね.

2013年5月7日火曜日

くしゃみ

まだ風邪が抜けきらない.ゼミ生も体調を崩したとかで,セミナーがキャンセルになる.

午前中は図書館に行ってちょっと調べ物をする.お目当てが帯出できない資料なのだ.ちょっと頭を使って,昼前に切り上げる.

ついでに,ノージック「アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界」など借りてみたが,貸出期間中に読みきれるか自信がない.

居室で昼食を取り,午後は書き物をする. しだいにくしゃみの間隔が狭まり,鼻をかむのに忙しくなってきたので,備蓄してあった鼻炎薬を飲んでみた.対症療法だが効果はあった.二三件来客があったほかは,平穏に過ごす.

日中,抜けるような青空だったが気温は低めに推移したようだ.

2013年5月6日月曜日

自由

牧場で風に当たりすぎたせいか,風邪気味で不調だった.自宅でおとなしくしている.

外は,風が少し強いが,日射しが強い.さっそく気温が25℃を越えて夏日になった.当地は冬には積雪があり,初夏を迎える前に夏日があり,真夏には35℃も珍しくない.これからしばらく,梅雨入りまでが良い季候である.

居間でごろごろしながら考え事をしていると,間違いではないが意味がないことをしていたことに気がついたりする.仕事柄そういうことも珍しくないのである.


森村進,自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)読了.リバタリアニズムの要約を本書冒頭から引用すると

「諸個人の経済的自由と財産権も,精神的・政治的自由も,ともに最大限尊重する思想」(同書p. 14)

ということらしい.「 経済的自由」,「個人的自由」をそれぞれ軸にとって,重視・軽視により4つの類型を作ると,前者を重視し後者を軽視するのが「保守派」,前者を軽視し後者を重視するのが「リベラル」,どちらも軽視するのが「権威主義」もしくは「人民主義」,となる.本書では,この両方を最大限尊重する「リバタリアニズム」がどのようなもので,その主張するところに従うと世の中はどのようにあるべきか,を論じている.

お祭りは,それをしたい人たちが勝手にやれば良いんじゃないの?と独りごちた経験がある人は,同感を持って読むでしょう.私は大変面白く読みました.ある種の問題集という側面もあるので,ページ数の割に,読むのに時間がかかりました.blog "The Adventures of Dr.Hara"で紹介されていたのがきっかけでした.

関係があるというわけではなく連想したのは,アメリカの銃規制反対派がテレビインタビューに,「個人が連邦政府に立ち向かうには,銃は必須だ」と答えていたことです.


自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)
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2013年5月5日日曜日

こどもの日・牧場・水族館

タイトルだけでほぼ言い尽くしているようにも思う.

連休前半は子供たちが腹を下したり熱を出したりという状態だった.せっかくの連休中だし,どこか連れて行かねばなりません,という発議が出る.

車で1時間ほどの,新川育成牧場へでかける.牛とか羊とか山羊とかウサギとかポニーとか…….青空に満開の八重桜,青々とした緑の牧場に水仙,そして真っ白に輝く僧ヶ岳が大変美しい.人間もたくさんいる.そして何をするにも行列をする.休日に行列をしに来たようなものだ.普段は線型代数を教えています.

子供がポニーに乗りたいというので応じる.手綱を引いてもらって,空き地を一周するのである.感想は,高い!ということだった.ポニーの背中でも,確かに目線は2メートルくらいにはなりそうである.親も同じ感想を持ったが,意味は違うのだが,それはよいことにしておこう.

昼食を挟んで,こんどは魚津水族館へ.今年度からリニューアルオープンしたのだそうだ.こぢんまりとしているが,今回は牧場で遊んだ後だったので,丁度良い規模だった.


2013年5月2日木曜日

木一

木曜の1限にも講義をすることになり,今日が初回.「集合論」という講義名だが,しばしば「集合と位相」というタイトルがつく科目のことである.2年生向け.論理式のやさしい計算や,集合算など.しかし,最初のあたりというのは,微妙なことがいろいろとあって難しいものである.

昼食を挟んで,調子が上がらないながら,小テストの赤ペン先生をしたり(実際はブルーブラックだが),出席の集計をしたりと事務作業をする.さらに,ちょっと計算して,pari-gpで数値的に検算して,合わない.

脱線して,プログラミングに適したフォントの人気投票で一番人気の,Adobe Source Code Proをインストールしてみるが,Emacsで見ると,ぱらっとしすぎていて今ひとつな感じだった(個人の印象です).Inconsolataに戻す.

家の中に,はやりの胃腸炎だとか,はやりの風邪だのが蔓延していてる.

2013年5月1日水曜日

補充法則

時間割上は月曜日なので,月一線型代数の日.まだ平面や空間の直線,超平面のお話である.こんな進捗で…….なんとか巻き返したい.毎回言っているような気もする.

終了後の質問に応じているうちに昼休み.昼食を挟んで,M1ゼミ.Ireland-Rosenの9章,3乗剰余記号のあたりに到達した.相互法則の証明は次回に回して,補充法則の証明をフォローする.本質的な場合が演習問題(K. Williamsの論文)になっているのだが,その前の演習問題も使うので,しだいに後ずさる形になった.

肌寒い曇天の下を帰宅.