2015年1月6日火曜日

講義開始

年明けの講義が始まった.午前中の代数の講義では,これまで初等整数論を題材に代数の基礎の話をしてきた.少し趣向を変えて,暗号への応用を紹介した.

初等整数論の一つのゴールは,有限体の乗法群が巡回群であること(原始根の存在)である.年末に原始根の存在と離散対数まで達したので,関連してDiffie-Hellmanの鍵共有と,Elgamal暗号を紹介した.

公開鍵暗号を解説するときは,現実の応用例として,インターネットで秘密の情報をやり取りするときに使われているのですよ,という事を言ったものだ.しかし,最近だと,デジタルコンテンツの保護にも使われる.DTCPやHDCPといった,デジタルコンテンツを(例えば再生機器とテレビの間で)通信する際の情報保護の規格では,楕円Diffie-Hellman鍵共有が使われているそうだ.

お昼を挟んで,午後は数学英語.受講者が少ないので,ゼミ形式で,英語で書かれた易しい雑誌記事,書籍の一部などを読んでいる.

Euclidによる,素数が有限個ではない,ことの証明は,はじめの $n$ 個の素数 $p_1 = 2, p_2 = 3, \dots, p_n$ をすべて掛けて,それに $1$ 加えた数 $p_n\# + 1$(ただし $p_n\#$ は,$p_n$と,それより小さい素数すべての積を表す)の素因子が,これら $n$ 個のどれとも異なることによる.

今回は,$p_n \#-1$ についても同じことが言える上に, $p_n \# \pm 1$ の素因子に共通するものがないので,$p_n$ より大きく, $p_n \# +1 $ かそれより小さい素数が少なくとも2つある,というような話.以前このブログでも取り上げたことのある,Aldaz-Bravoの短いノートである.

$p_n\# +1 $は素数になることもならないこともあるが,無限回素数になるのか?といったことはまだわかっていないそうだ(Weisstein, Eric W. "Euclid Number." From MathWorld--A Wolfram Web Resource).なので,$p_n \# -1$ についての同様の疑問もわかっていないのではないかと思う.

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