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2017年4月27日木曜日

定例のセミナ

金沢での定例のセミナ,今年度2回目でした.ノートからちょっと抜き書き.

$k$を有限次代数体とする.素数$p$を固定して,$k$の$\mathbf{Z}_p$拡大(つまり,$k$のGalois拡大で,Galois群が$\mathbf{Z}_p$の加法群と同型なもの)すべての合成体を$\tilde{k}$と置くと,$\tilde{k}/k$はGalois拡大で,そのGalois群は$\mathbf{Z}_p^{r_2+1+\delta}$, ($r_2=r_2(k)$は$k$の虚素点の個数,$\delta = \delta(k,p) \ge 0$はLeopoldt defectとも呼ばれる非負整数で,$\delta(k,p)=0$が$k$と$p$に対するLeopoldt予想)である.

$L(\tilde{k})$を$\tilde{k}$の最大不分岐Abel $p$拡大とし,$X=\text{Gal}(L(\tilde{k})/\tilde{k})$をGalois群とする.$X$には完備群環$\Lambda=\mathbf{Z}_p[[\text{Gal}(\tilde{k}/k)]]$が共役によって作用する.Iwasawa-Greenbergにより,$X$は$\Lambda$加群として有限生成かつねじれ加群であることが示されている.

今回のセミナーの主眼は,"Generalized Greenberg Conjecture" (GGC), すなわち,$X$は$\Lambda$加群として "pseudo-null", つまり,$\Lambda$加群としてのannihilatorイデアル $\text{Ann}_{\Lambda}(X)$の高さが$2$以上であろう,という予想であった.特に,$k$が虚2次体,$p=3$の場合を主に論じた.

日々些事に紛れてしまいがちですが,こういう機会を持つと,なんというか,元気が出ますね.

2014年1月8日水曜日

紛らわしい

午前中は,文献読み.昨年11月下旬ぐらいに,落ち着いたら読もう,と借りた専門書を,年末から眺めていた.松の内も明けてようやく,何が書いてあるのかは分かってきた.

昼食を挟んで,午後は会議.思ったよりも早く終わったので,郵便局へ出かけたり,幾つか所用を済ませることもできた.

学科の図書室で数セミを眺めていたら,Szemerediについての記事が面白かった.当時のソビエトに留学するに当たって,

本当はA. Gelfondに就くつもりが,ミススペルでI. Gelfandに送られてしまい,Kazhdan, Margulis, Manin, Arnoldといった人たちと一緒のセミナーで何も理解できずにつらかった.………数学セミナー 2014年 01月号 : グラフ理論の新展開の徳重先生の記事から.

Szemerediについてはこのblogでも何度か触れていると思うが,組合せ論,グラフ理論から数論までに大きな足跡を残した数学者である.Gelfond(超越数論)とGelfand(表現論を始め極めて広い範囲で活躍した)とは紛らわしいが,そんなことが本当にあるのか,という印象で大変おかしい.

そして,Kazhdan, Margulis, Manin, Arnoldといった人たちは,ごく控えめに言っても20世紀の巨人たちであって,そういう人たちが同じセミナーで切磋琢磨していたというのも,ものすごい話である.

詳細は,Notices of AMSのSzemerediへのインタビュー記事にある.


2014年1月7日火曜日

平和と繁栄

新年のご挨拶を申し上げます.本年もどうぞよろしくお願い致します.

1限目は1年生向け線型代数.今月4回やると,もう期末試験である.線型空間(ベクトル空間)の公理的な取り扱いを始めたので,ゆっくり目に説明する.

2限目は大学院の代数学.昨年末から圏論の初歩的な話題を扱っていて,今回は米田の補題の証明から.更に,無限次のGalois理論を圏の言葉で述べるバージョンを,結果だけ述べて時間切れ.

昼食を挟んで,午後はM1ゼミ.Ireland-Rosenの14章で,Eisensteinの相互法則やStickelbergerの定理など,こちらも結果を述べるところまでで時間切れ.

ゼミ室が寒いとか,最近は陽が射して外のほうが暖かいとかの雑談のおりに,Stickelbergerの定理(Stickelberger元という,円分体のGalois群の群環の特別な元が,イデアル類群を消す,という定理)から,岩澤理論というものがあって~,という話になる.また,Eisensteinの相互法則の応用として,Fermat予想の第1の場合に対するMirimanoffの判定法が得られるが(Irerand-Rosenの当該箇所に,それを含むFurtwänglerの定理が証明されている),Fermat予想そのものの解決も,やはり岩澤理論の強い影響下でなされた,というような話もする.

1960年前後から50年少々で,数論における様々な大問題が解決されてきたが,それはどうしてなのか,というと,やはりそれが可能になるような,平和と繁栄があったからではないか.やはり平和が大事だ,というような話もした.

世の中の平和も大事だが,やはりそれは個々人の胸の内に平和がないとなされないであろう.

夕方,図書室で新着図書をながめていたら,斎藤毅先生の「Fermat予想」の英語版(の前半)が入っていた.


Fermat's Last Theorem: Basic Tools (Translations of Mathematical Monographs)
Takeshi Saito
Amer Mathematical Society
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2013年10月31日木曜日

木曜はセミナ

午後には終わるはずだった書き物が終わらず,出かける刻限もせまり,とにかく終わらせる.鼻が長い獣が卵を産むとかどうとか言う,荒唐無稽なやつである(かなり内輪受け).

遅参確定だったが,とにかく列車に乗って金沢へ.二面体拡大でも,高次類数公式( $L$ 関数の負の整数点での値で,コホモロジー群の位数を記述する公式)が成立する,というお話.大変興味深く拝聴した.

会食の後,いつもどおりバスに乗って帰宅.

2013年9月27日金曜日

amsalphaでの文献表にURLを表示させる

個人用の数学メモをLaTeXで作成していて,文献は別に文献ファイルをbibtexで作成している.論文,書籍の書誌情報は,MathSciNetからbibtex形式でダウンロードできる.

メモの参照文献一覧は,amsalphaの形式にしているが,不満はURLが表示されないことである.DOIのURLが表示されれば,dviファイル(やPDFファイル)のURLをクリックすると当該論文にアクセスできて便利である.

次のようにすれば良い.手っ取り早く,amsalpha.bstを書き換え(追記し)てしまうことにする.

以下末尾までを例えば zz.txt というファイルに書き込み,amsalpha.bst と同じディレクトリに置いて,

> cp amsalpha.bst amsalpha.bst.bak # 念の為バックアップを作る
> patch < zz.txt

とする(行頭の > はプロンプトのつもり.ドルマークにするとMathJaxが処理してしまうので).これで amsalpha.bst が書き換えられたので,後はいつもどおりに platex, pbibtex で文書を作成すれば良い.bibtexのデータにurlがあれば,それが参考文献欄に印字されるはずである.

DOIを経由して論文雑誌にアクセスする以外に,例えば arXiv から入手したプレプリントならそのURLを,あるいは,Dropbox においたファイルならばそのファイルのURLを貼るなど(DropboxのFAQ「リンクの取得」を参照),応用があると思う.

追記(2013/09/28):

  • 前提として,プリアンブルでの usepackage{url} が必要です
  • ほとんど同じ修正を施した,amsplain-url.bst というファイルが公開されているようです


*** /usr/share/texlive/texmf-dist/bibtex/bst/amscls/amsalpha.bst        2009-09-11 02:11:21.000000000 +0900
--- ./amsalpha.bst      2013-09-27 17:47:45.000000000 +0900
***************
*** 106,111 ****
--- 106,112 ----
      series
      title
      type
+     url
      volume
      year
    }
***************
*** 728,733 ****
--- 729,745 ----
    " \cite{" * crossref * "}" *
  }

+ %% format.url
+ FUNCTION {format.url}
+ { url empty$
+     { "" }
+     {
+       "\url{" url * "}" *
+     }
+   if$
+ }
+
+
  %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%

  % The main functions for each entry type.
***************
*** 750,755 ****
--- 762,768 ----
    if$
    format.language *
    note output
+   format.url output
    fin.entry
  }

***************
*** 777,782 ****
--- 790,796 ----
    format.date "year" output.check
    format.language *
    note output
+   format.url output
    fin.entry
  }

***************
*** 788,793 ****
--- 802,808 ----
    address output
    format.date output
    note output
+   format.url output
    fin.entry
  }

***************
*** 817,822 ****
--- 832,838 ----
    format.date "year" output.check
    format.language *
    note output
+   format.url output
    fin.entry
  }

***************
*** 838,843 ****
--- 854,860 ----
    note output
    format.book.pages output
    format.language *
+   format.url output
    fin.entry
  }

***************
*** 858,863 ****
--- 875,881 ----
    note output
    format.book.pages output
    format.language *
+   format.url output
    fin.entry
  }

***************
*** 889,894 ****
--- 907,913 ----

2013年7月30日火曜日

40年

午前中は学内某所に潜伏して文献読み.さすがに試験週間中は混雑する.

周りを見回すと,試験勉強に打ち込む人,そのはずが談笑・スマートフォンいじりになっている人などいろいろ.キッテルの固体物理学を開いたまま固まっている人もいたりして,たぶん固体になりきっているんだろう(駄洒落).

昼食を挟んで,午後はM1ゼミ.Ireland-Rosenの11章は終わらず,対角型超曲面のゼータ関数を計算するところまで.本文中に,Weil予想は1973年にDeligneによって解決,とある.論文Weil I (リンクはNUMDAM)は1974年刊行だが,確かに投稿は1973年の9月だった.40年経っているのか.

M1ゼミはいつもより少し早めに終わったので,昨日実施の期末試験の採点をすべき,と分かってはいたのだが,自分の文献読みを進めてしまった.

2013年7月23日火曜日

禁じられた素数

火曜日午前は,自分のゼミの院生向けに雑談ゼミ.大分前に用意したノートで,ろくにおさらいせずに話し出したら,ずいぶんと見苦しい様子になってしまった.大いに反省せねば.

昼食を挟んでM1ゼミ.Ireland-Rosenで,合同ゼータ函数の話.代数幾何の言葉遣いをできるだけ素朴な範囲にとどめているので,かえって深読みが必要な感じがする.また,有限体の拡大の取り扱いが,素体上の拡大の場合と,有限体上の拡大との場合とで分けて書いてある.初学者への配慮かもしれないが,後者を論じるときに,「素体の拡大のときと同様の議論で」が頻出する.しかし大過なく終了.

違法素数」(リンクはWikipedia)というものがあるらしい.どんなデータもビット列にして(0だけの並びではないとして),それを自然数の2進表記だと思えば,その自然数を法として1余る素数が存在する.つまり,何らかのデータを違法だとするなら,自動的に違法な素数が1つ生み出されることになる.素数表の単純所持が禁じられる日がくるだろうか?

2013年6月26日水曜日

採点しているときというのは

所用で遅めに出勤.雨.

職場では,今月いっぱいは空調が使えない見通しである.窓もドアも全開にして過ごしているので,目隠しにのれんを下げてみた:


なかなかに良い感じである.

昼食後,こんどは業者さんらが,窓に網戸を入れる工事の下見に来訪された.什器類の配置のせいで,採寸にすこし手こずっておられたが,間もなく終了.

午後は,月曜日に実施した中間試験の採点をしていた.意図したように,できは良いので安心した.

採点しているときというのは,ゼミで発表を聞いているときと似た頭の使い方をしている.試験の解答が,ゼミでの発表のようなものである.こちらは,うん,うん,と頷きながら聞いていて,発表者が変なことを言うと(解答者が変なことを書くと),「なんで?」となるわけである.試験の答案では追加の説明はしてもらえないので,説明が不十分・間違っていれば相応に減点する.


夕方,抜け出しておやつを食べつつ,別の,査読のようなお仕事.小雨の中を帰る.

2013年6月11日火曜日

有理

蒸し暑い日が続く.

午前中は,修士のゼミ生対象に,雑談のような講義のようなという催しの何回か目.ゼミで読んでいるテキスト以外に,こんな事も知っておいて欲しいなぁ,という話題をちらつかせて,あわよくば自ら勉強してもらおう,という趣旨である.しかし,こちらがあまり気負ってもしょうがないので,半ば自分の備忘のため,忘れかけている記憶を賦活するため,の時間でもある.

昼食を挟んで,午後はM1ゼミ.Ireland-Rosenの本で9章の本文まで一応終了.Rational biquadratic reciprocityは,つまりなんなんだぜという第一印象なのが当然と思われるが,E. Lehmerの論説 Rational Reciprocity Laws が手短で読みやすい.

普段書き物は万年筆でしているが,湿気のせいかインクの乾きがわるくなってきたような気がする.吸い取り紙をセットして使う,「コレクト・ブロッターABS樹脂・P-209-GYグレ」を買ってみた.さっそく子供らのおもちゃになっている.

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2013年5月28日火曜日

まずぐぐる

午前中はM2ゼミ.教科書を卒業して,論文・論説に取りかかってみたが,いろいろと前途遼遠という印象だった.さしあたり必要になるであろう論文を集めに出かけて,文献の探し方をレクチャーしたり,見つけたものをダウンロードして整理したりする.

探し方と言っても,手持ちの文献の文献表を見つつ,「まずぐぐる」,「隣のタブでMathSciNet」とか,かなりイージーである.

文献と言えば,Elsevierへのボイコットがあったのは去年の2月頃である.最近のGowersのblogの記事「Elsevier journals: has anything changed?」に依れば,JNTのあるエディターが辞任したそうである.詳細については同記事を読んでいただきたい.

昼食を挟んで,午後はM1ゼミ.Ireland-Rosenの本で,4乗剰余記号の相互法則の証明を読む.相互法則を証明したら,ではガウスの整数環の,ノルムが $100$ 以下の素元 $\lambda$, $\mu$ に対して,$(\lambda/\mu)_4$ を計算しましょう,計算ドリル!という宿題を出そうと思っていたけど,終わったらくたびれていて出し忘れた.

夕方から小雨がぱらつきだして,じめじめするけど体が冷える感じ.帰宅してすぐに風呂に入った.

2013年5月27日月曜日

手紙だと思って

月曜日の1限の線型代数.2次元の場合の行列式,3次元の場合の外積,そして3次元の平行体の体積あたりまで,その他の話題.

小テストの解答の仕方について,ふつうの日本語を書くように,つまり,何がどうしたのか,その理由は何なのか,等々が読み取れるように書きましょう,答案を読む人への手紙だと思って書きましょう,というようなお話をした.

数学についての日本語を書くに当たっては,結城浩さんの「数学文章作法 基礎編 (ちくま学芸文庫)」をお勧めする,という話もしたが,上のようなことならむしろ,数学ガールの秘密のノート第3回,連立方程式のアピール,のほうが近かったかもしれない.

さらに,同氏の「数学ガール (数学ガールシリーズ 1)」とその一連の続巻も,本格的な数学の本である事,また,ちくま学芸文庫は,数学や物理の本格的な本がたくさん揃っている不思議なシリーズなので,それぞれ見かけたらぜひ手に取ってみるように,と勧めておいた.

終わって,小テストをソートして出欠を集計するところまで済ませて,学内のカフェに脱出した.居室は蒸し暑いが,ここなら空調が効いているのである.ちょっと数値計算の続きをする.

午後のM2ゼミは,スピーカ氏の都合で翌日へ延期されたので,さらに自分の仕事の続き.


数学文章作法 基礎編 (ちくま学芸文庫)
結城 浩
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2013年5月25日土曜日

連続する冪剰余の列

金,土と,木曜日の金沢でのセミナで聞いた話を数値的に追試していた.$p$ を $3$ で割って $1$ 余る素数としたときに,法 $p$ で $0$ でない元の代表系 $R = \{1,\dots, p-1\}$ の中に,$3$ 乗剰余(つまり,$a\in R$ で,$x^3 = a \pmod{p}$ となる $x\in R$ が存在するような $a$)の連続列がどのくらい存在するかを考えるのである.

例えば,$p = 1009$ とすると,$\{182, 183, \dots, 186\}$ の5つが連続した $3$ 乗剰余であり,これを,$3$ 乗剰余の長さ $5$ の連続列と言っている.同様に $\{823, \dots, 827 \}$ も5つの連続した $3$ 乗剰余である.長さが5の列はこの2つしかない.長さが6かそれより大きい列はない.長さが4のものは6つある(但し,長さは「丁度4」のものを考える.長さ5の列には長さ4の部分列が2つ含まれるが(つまり $\{182,\dots, 185\}$ と $\{183, \dots , 186\}$ これらは長さ4には含めない).

法 $p$ についての連続する $k$ 乗剰余についての考察はたくさんあり,指標和の評価に依るもの,自然数の彩色に関する van der Waerden の定理のように組合せ論の手法をとるもの($3$ 乗剰余で類別することは,自然数を $3$ 色に塗り分けることに相当し,連続する列というのは公差が $1$ の等差数列である),様々な先行研究があるようだ.

暑い一日だった.炎天下,側溝の泥を掻き出して麻袋(実際には化繊だが)に積めたり,汚水枡に薬液を流したりと少し家の周りのこともした.

2013年5月21日火曜日

きれ

午前中は,ゼミの院生向けに一コマお話.講義というほど堅苦しくなく,そもそも単位も出ない自主ゼミのようなもの.

昼食を挟んで,午後はM1のゼミ.Ireland-Rosen, A Classical Introduction to Modern Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)の4乗剰余記号のあたりに入って,でも,相互法則の証明は次週に回すという.Gauss自身がこの発見について記録した論文が,邦訳されている(ガウス 数論論文集 (ちくま学芸文庫))ので,彼らに紹介しておく.

すでに蒸し暑く,夕方になると体にきれがない(朝方にあるとは主張していない).

2013年5月20日月曜日

錯覚から自らを解放するために

月曜1限1年生向けの線型代数は,3次元空間での線型変換など.具体例として,回転や射影を扱う.次回以降,3次の正方行列の行列式を扱うのだが,「数学セミナー 2013年6月号 ベクトル・行列が見せるもの」の当該特集を受講者諸君に勧めてみた.「数学セミナー」という雑誌を知っていたのは,4~5名という印象だった. 

出席を確認するのと,理解度を見るために,毎回小テストを実施する.教科書の本文中の問を,15分ほどでできるところまで解いてもらう.成績には反映させない(出席も,小テストのでき具合も).これは非常によい方法と自負している.正しいことをしゃべれば,受講者が理解する,という錯覚から自らを解放するために. 

午前の残りの時間は,小テストの集計とコメントに使う.てにをはの整った,読める文章を書いてください,というのが一番多いコメントで,これはもう判子を作りたいくらいだ.判子を作るための小さな3Dプリンタなど商品化されないだろうか.

昼食を挟んで,午後はM2ゼミ.先週の水曜日に引き続き,小野孝先生の「数論序説」の2章の終わりあたりを読む.2次体のArtin写像と,特にそのkernelの決定まで.Dirichletの算術級数定理の証明は3章以降なので,それは認めて使う.考えている2次体で分解する素数が存在することが,それで保証される.2章まで終わったので,別の文献に移ることも含め,今後の方針を話し合った.

2013年5月14日火曜日

3項Goldbach予想,双子素数

午前中,自分のゼミの院生向けに,内輪の講義.勉強するきっかけになればと思い,代数的整数論から話題を選んでざっくりとお話しするという催しを始めた.

昼食を挟んで,もう一度,今度はM2のゼミだと思ったが,連絡の行き違いで今日ではないと思っていたという.仕方ないので延期して,午後は時間ができた.

3項Goldbach予想が解決されたらしい,というので,プレプリントarXiv:1305.2897)を見てみる.今回証明された(らしい)のは,「5以上のより真に大きい奇数は,三つの素数の和である」,という主張である.もう一つの,「2以上のより真に大きい偶数は,二つの素数の和である」のほうは未解決.(2013/05/18記:「以上」は等号を含むので訂正しました).

3項Goldbach予想は,既に1937年にI. M. Vinogradovによって,「ある正の定数 $C$ が存在して,$C$ より大きい奇数は三つの素数の和である」ことが証明されていた.このときは $C$ は不明だったが,その後,$C$ がいくつにとれるか,という線で研究が進んできた.

例えば2002年には,$C = e^{3100}$ ととれることが示されていた.したがって,$e^{3100}$ 以下の奇数について(それらはとにかく有限個だから),三つの素数の和である事を示せば,3項Goldbach予想を示したことになる.問題は,$e^{3100}$ が巨大すぎることである.

今回のHelfgottの結果は,$C=10^{30}$ ととれることを示した.そして,この $C$ より小さい奇数が三つの素数の和である事は,コンピュータで個別に確かめた(2013/05/18記:個々の数に対して逐一確かめたわけではないです.H.A. Helfgott, David J. Platt, Numerical Verification of the Ternary Goldbach Conjecture up to 8.875e30, http://arxiv.org/abs/1305.3062 参照).この $C$ より大きい奇数については,三つの素数の和である事を理論的に証明した.これにより3項Goldbach予想は証明された,ということらしい.

繰り返しになるが,「2以上の偶数は,二つの素数の和である」のほうは未解決である.T. TaoのGoogle Plusへの投稿なども参照.

さて偶然ながら,同じ日に同じ解析数論で,もう一つ大きな進展があったらしい.$(3, \, 5)$, $(5, \,7)$, $(11,\, 13)$ のように,$p$ も $p+2$ も素数であるような,言い換えると,差が2であるような素数のペアを双子素数という.「双子素数は無数にある」というのは古典的な未解決問題であった.

今回アナウンスされたのは,「差が70,000,000以下の,相異なる素数のペアが無数に存在する」という結果である.こちらはプレプリントなどは公開されていないようだ.情報源としては,著名なblog "Not Even Wrong" のこの記事が挙げられる.Natureにも記事がでている.

著者のZhangは,Annals of Mathからの査読報告を上記Natureの記者に見せているそうで,それによれば "We are very happy to strongly recommend acceptance of the paper for publication in the Annals." ということらしい.


数学はとどまっていない,という有名な台詞を思い出しますね.

2013年5月1日水曜日

補充法則

時間割上は月曜日なので,月一線型代数の日.まだ平面や空間の直線,超平面のお話である.こんな進捗で…….なんとか巻き返したい.毎回言っているような気もする.

終了後の質問に応じているうちに昼休み.昼食を挟んで,M1ゼミ.Ireland-Rosenの9章,3乗剰余記号のあたりに到達した.相互法則の証明は次回に回して,補充法則の証明をフォローする.本質的な場合が演習問題(K. Williamsの論文)になっているのだが,その前の演習問題も使うので,しだいに後ずさる形になった.

肌寒い曇天の下を帰宅.

2013年4月25日木曜日

木曜はセミナ:今年度初回・GGC

例によって午前中は学内某所に身を潜めていた.

昼食後,北陸数論セミナの初回に移動するタイミングをはかる.今日はいつもより開始が1時間早い.16時のバスに乗りこみ,日差しが傾いだ中を,金沢へ移動.

虚Abel体のGGC(一般化Greenberg予想)についてのご講演を大変興味深く聴講した.その後の懇親の宴を楽しんで,年度の変わり目につきもの,異動の話を聞いたりして,いつものバスで帰宅.

2013年4月22日月曜日

久しぶり

月曜1限,1年生の線型代数の講義から週が始まるのはいつもどおり.朝方からおさらいをして,通学通勤の人々に紛れて出勤.

まだ平面や3次元空間での幾何(直線や平面)の復習をしているのだが,こんな進捗で大丈夫か?と自問自答.どこかでつじつまを合わせねばならない.

私の講義では,出席はとっている(テキストの問を小テストとして10分~15分で解いてもらう)のだが,成績には反映させない.しかしこの方針を貫くためには受講者の理解・協力も必要である.少なくとも,小テストの直前に現れて,名前だけ書いた紙片を提出するような受講者がいると,このままで良いのか,大いに考えさせられてしまう.

昼食を挟んで,午後はM2ゼミ.小野先生の本で,Hilbertの分岐理論,Frobenius自己同型,Artin記号まで.ゼミでこのあたりの話題にまで来るのは,久しぶりである.

Twitterで,岩熊哲夫さんの「大学1年生のとんでもない勘違い」という文書を知ったのでリンクしておきます.同氏の styleuse.dvi は一頃とても参考にしていました.

2013年3月20日水曜日

休日出勤

何かの祝日でお休みだけど,例年この日は出勤日となる.午前,午後ともに短めの会議が入る.

合間に文献調査・文献読み.夕方は早めに撤収した.生暖かい南風が強く,気温が高め.子供らは,日中映画を見に連れて行ってもらったりしてご満悦だったようだ.

夜になって,P. Deligneが今年のAbel賞を受賞との報に接する.リンクされているK. Murtyのプレゼンが面白い.

2013年3月6日水曜日

記号

出勤してみると,合格発表の掲示を出すための立て看板がずらりと準備されている.発表は3月7日(木)である.

来年度のシラバスを書くように,とのお達しが回ってきた.休み中は,どうしても理想にひっぱられて作文をしがちだ.現実を直視しなければならない.

もしこれから線形代数の教科書を書こうという方がおられたら,行列の括弧には,カギ括弧 $\displaystyle \begin{bmatrix}a & b\\ c& d\end{bmatrix}$ ではなく,丸括弧 $\displaystyle \begin{pmatrix}a & b\\ c& d\end{pmatrix}$ を使うよう,そして行列式の記号には,行列の両側を縦棒でくくる記法 $\displaystyle \left|\begin{matrix}a & b\\ c& d\end{matrix}\right|$ ではなく,$\displaystyle \det\begin{pmatrix}a & b\\ c& d\end{pmatrix}$ といった記法をお勧めしたい.というのは,前者の記号を混同してしまう人が,すくなからずいるからである.