たまたま読んでいた,プラトン,藤沢令夫訳「パイドロス (岩波文庫)
「王様,この文字というものを学べば,エジプト人たちの知恵は高まり,物覚えはよくなるでしょう.私の発見したのは,記憶と知恵の秘訣なのですから.」(上掲書p. 163)
しかし,アンモンは,テウトが自身の発明した文字を喜ぶあまり,文字が実際に持っている効能がその逆である事を見落としていると指摘する.
「人々がこの文字というものを学ぶと,記憶力の訓練がなおざりにされるため,その人たちの魂の中には,忘れっぽい性質が植え付けられることだろうから.それは他でもない,彼らは,書いたものを信頼して,ものを思い出すのに,自分以外のものに彫りつけられたしるしによって外から思い出すようになり ,自分で自分の力によって内から思い出すことをしないようになるからである.じじつ,あなたが発明したのは,記憶の秘訣ではなくて,想起の秘訣なのだ.」(同,p. 164)
まさに,「自分で自分の力によって内から思い出す」ようになることが目的なのだと思う.論ずるべきはそのためにはどうすればよいだろうか,ではなかろうか.