2007年11月27日火曜日

書評:勝間 和代,お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

勝間 和代,お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)を取り上げます.



新書らしいタイトルになっていますが,副題の方がより内容をあらわしていると思います.「こうしたら儲かりますよ」的なノウハウ本(多くが信憑性に疑問のある)ではなく,次のような事を説いています:

  • 金融リテラシーとは「金融に関する情報や知識を単に学ぶだけでなく,そこで与えられたものを批判的に見ながら自己の金融に対する学習を経験として重ねていくことで,金融の情報や知識を主体的に読み解くことが出来るようになること」(同書p. 18)

  • ワークライフバランスのために,資産ポートフォリオの中にリスク資産を組み込むことが必要

  • リスクとコストに見合ったリターンを得られる金融商品を選んで,適切な資産ポートフォリオを組む

1章は上記のような全般的なこと,最終章の4章は「金融を通じた社会責任の遂行」と題して,社会責任投資や金融の生涯教育について論じています.これら2つの章がこの本に独自の大きな柱と言えるでしょう.

同じ著者の「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」や「無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法」にも通底するテーマが,自分の労働時間の単価を上げることで,労働以外に使える時間を増やそう,ということ.本書も,そのテーマを実現するための一方法と見るべきでしょう.

2章では,定期預金と国債から始めて,株式,為替,不動産,投信,生命保険などの解説.3章は実践編として,証券会社に口座を開き,インデックス投信の積み立てを始める云々.

これからリスク資産の運用を始めようとする人には,明快で平易な解説書としてお勧めです.少し知識のある人や,既にリスク資産の運用を開始している人には,各金融商品の説明がやや食い足りないかもしれませんが,上述のように,1章,4章の記述が興味深いと思います.

以下余談.株の個別銘柄取引で利益を出すのは,素人にも玄人にも難しく,インデックス商品のbuy and holdが長い目で見ればもっとも有利な戦略,ということを納得したい人には,橘玲「臆病者のための株入門 (文春新書)」をお勧めします.


また,資産運用においては,どの銘柄,どの投信を買うかよりも,どの資産をどのくらいの割合で持つかの資産配分が重要であること,ならびにここの金融商品の売買に関する詳細については,内藤忍「内藤忍の資産設計塾―あなたの人生目標をかなえる新・資産三分法 」自由國民社など内藤氏の本をお勧めします.ただし後者は,マネックス証券の関係者ということで,具体例としては同社が取り扱っている商品が多く取り上げられています.

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