テーマは,Sturmの定理を実2次体上のHilbert modular cusp formに拡張しようというものである.楕円保型形式に対する,もともとのJ. Sturmの定理というのは以下のようなものであった:lを奇素数とする.f(x)がウェイトk, レベルNの楕円保型形式で,無限遠点での展開が
なるものとする.すると,kとNで具体的に書ける(lには依らない)ある定数κが存在して,
虚2次体の類数を,総実代数体上のCM体の相対類数に拡張しようというのは自然な発想で,すると基本的なツールとして,Sturmの定理を,総実代数体上のHilbert保型形式に拡張したものがひつようになる.
スピーカ氏の結果は,総実代数体として実2次体をとれば,Sturmの定理の類似が成り立つ,というものであった.証明の方針は,Sturmのもともとのものではなく,Doi-Ohtaによる,modular曲線のreduction mod lに対するRiemann-Rochを使うものを,Hilbert modular surfaceの場合に適合させるというもの.代数幾何的なセットアップが必要になるので,技術的には非常に込み入ったものになる.大変興味深く拝聴した.
毎回,セミナ終了後に会食していた店が9月いっぱいで閉店していたのが,最後に待っていたサプライズ.有為転変である.
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