2013年3月10日日曜日

真っ赤な

日中は家族が出かけたので,留守番.

昼食をつくり,食べながら,「終身犯 [DVD]」を観る.バート・ランカスター主演,監督は,ジョン・フランケンハイマー.殺人で収監され,さらに獄中でも殺人を犯した主人公ロバート・ストラウドは,死刑こそ家族の働きかけで免れるものの,終身刑に処せられる.しかし,ふとしたことで小鳥を飼いだし,やがて鳥類の病気に関する権威にまでなる.自ら開発した,鳥の病気に関する薬を売る事業を,外部の協力者と興し,やがてその女性と結婚するまでになるが………というような,実話にもとづく筋書き.

久々に見かえして,今の感覚だと,やや間延びした印象の箇所,またもう少し焦点が絞れそうにも思えたが,人間は何によって生きるのか,などと考えもする.この映画と,モデルとなったストラウドのことは,金沢21世紀美術館の展示作品,ヤン・ファーブルの「雲を測る男」で知ったのだった.

などと余韻に浸る間もなく,居間はドタバタと走り回る連中に席巻されてしまう.隅の方で珈琲を飲みながら,米原万里「嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)」も読んでしまう.Kindleストアで安くなっていたので,名前は知っていても読んだことはなかったこの著者に取り組んでみた.

著者が1950年代にプラハのソヴィエト学校に通っていた頃の話と,成人後にそこでの同級生を訪ね歩いたノンフィクション.日本共産党の要職にあった著者の父がプラハに派遣され,その師弟として恵まれた生活を送りながらも,著者は子供心に色々な矛盾を見ていた.長じて,プラハの春とその弾圧,ボスニアでの民族紛争後の中欧で生きる旧友たちとの再会を通して語る話は,機知に富んだ筆遣いという糖衣にくるまれてはいても,大変に苦いものであった.

その日の授業は,マリヤ・アレキサンドロヴナ先生のこんな質問から始まった.「人体の器官には,ある条件の下では6倍にも膨張するものがあります.それは,何という名称の器官で,また,その条件とは,いかなるものでしょう」.(同書,位置No. 2326)
この質問に答えるよう当てられた女子学生ターニャ・モスコフスカヤが,「あたし,恥ずかしくて答えられません」などと言い,結局どういうオチがつくのかは,是非同書に当たって頂きたい.

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