論文を読んで証明をフォローしても,どうも腑に落ちない,そういうことがらが成り立つintrinsicな理由がよくわからない,という不全感が残ることがあり,それはもちろん個人の資質のせい,というのが一つの説明だが,もう一つの説明としては,やはりまだ解明し切れていないせい,ということも勘定に入れておいて良いと思う.だが,あまりにそれに拘泥して手をこまねいていてもしょうがないので,できることはやってしまう,という方針は健全なものである.
週末から読んでいた,カート・ヴォネガット「スローターハウス5」をKindleで読了.高校生の頃に読んでいるはずだがほとんど記憶に残っておらず,再読して非常に強い印象を受けた.第二次大戦のドレスデン爆撃に巻き込まれた主人公ビリー・ピルグリム(作者の分身でもある)を語り手とする物語だが,時間と空間を無作為に飛び回りつつ,果ては宇宙人に拉致されたりもしながら,確かにこういう書き方でないと伝わらない事を伝えている.
ドレスデン爆撃の第一陣は,本作では米空軍による爆撃であるかのように書かれているが,実際には英空軍によるものだった.それについては,ダイソンの「宇宙をかき乱すべきか」の始めの方で,「スローターハウス5」を引きながら語られている.ダイソンは爆撃隊が所属する空軍基地で,例えば乗組員の生還の割合が他のどんな指標と相関するか,といった統計解析を行っていたという.
F. ダイソン
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