2012年5月3日木曜日

モジュラー形式・テータ級数(2):mod 4で1の素数は2平方数の和

昨日の記事では,$4$で割って$1$余る素数を2つの平方数の和と表す問題から,CM楕円曲線を経由してモジュラー形式に至った.今日はより直接的にモジュラー形式と関連するお話.

まず,指標付きのEisenstein級数$G_{k,\,\chi}(z)$を定義する.$\chi$を法$N$に対するDirichlet指標(群準同型$\chi\colon (\mathbf{Z}/N\mathbf{Z})^\times\to \mathbf{C}^{\times}$を,$(n,N)\neq 1$なら$\chi(n)=0$として$\chi\colon\mathbf{Z}\to\mathbf{C}$へ伸ばしたもの)とする.正整数$k$と$N$, 法$N$のDirichlet指標に対して \[ G_{k,\,\chi}(z) = c_k(\chi) + \sum_{n=1}^{\infty}\left(\sum_{d\mid n}\chi(d)d^{k-1} \right)q^n \] と定義する.但し$\chi(-1)=(-1)^k$を仮定し,また \[ c_k(\chi) = \frac{1}{2}L(1-k,\chi) \] は,Dirichlet指標$\chi$に対するDirichlet $L$函数の$1-k$での値の半分で,これは代数的数になる.すると,$G_{k,\,\chi}(z)$は,重み$k$, レベル$N$, 指標$\chi$を持つモジュラー形式になる.

一方,テータ級数$\theta(z)$を \[ \theta(z) = \sum_{n\in\mathbf{Z}} q^{n^2} = 1 + 2\sum_{n\geq 1}q^{n^2} \] とする.その$2$乗$\theta(z)^2$は,重みが$1$, レベル$4$, 指標$\chi_{-4}(\cdot)=(-4/\cdot)$をもつモジュラー形式になり,整数を二平方数の和に書き表す書き方 \[ r_2(n) = \# \{(x,y)|\, x^2+y^2=n,\, x,\, y\in\mathbf{Z}\} \] と次のような関係があることが分かる: \[ \theta(z)^2 = \left(\sum_{n\in\mathbf{Z}} q^{n^2}\right)\left(\sum_{m\in\mathbf{Z}} q^{m^2}\right) = \sum_{n\geq 0}r_2(n)q^n. \]

さて,重みが$1$, レベル$4$, 指標$\chi_{-4}$をもつモジュラー形式で$q$展開が$0$でない定数項を持つものの全体は複素$1$次元なので,$G_{1, \chi_{-4}}(z)$と$\theta(z)^2$は定数倍で一致する.この定数は$L(0,\chi_{-4})=1/2$から$4$であること($4G_{1, \chi_{-4}}(z) = \theta(z)^2$)が分かる.よって,$p\equiv1\pmod{4}$なる素数については, \[ r_2(p) = 4(\chi_{-4}(1) + \chi_{-4}(p)) = 8. \] 特にそのような素数は,二平方数の和である事(更に,二平方数和としての表し方が順番と負号の付け方を除いて一意である事)が分かる.

参考文献は,Zagierの1-2-3の論説の§3.1.

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