2012年5月2日水曜日

モジュラー形式・テータ級数:mod 4で1の素数は2平方数の和

$E\colon y^2=x^3-Dx$のHasse-Weil $L$函数が,Hecke $L$函数に一致すること(Deuring-Weil)を見た.今回は更に,これらがあるモジュラー形式の$L$函数である事を見る.

特に$D=1$, つまり$E\colon y^2=x^3-x$の場合を考えると,対応するHecke指標は,$P$が$2$の上にある素イデアルなら$\chi(P)=0$, それ以外の場合は$\chi(P)=\pi$, $P=(\pi)$, $\pi\equiv 1\pmod{2+2\sqrt{-1}}$, となる.このとき$E$に対応するモジュラー形式は,重み$2$, レベル$32$のテータ級数(CMモジュラー形式) \[ f_E(z) = -\sum_{\mathfrak{a}\subset\mathbf{Z}[\sqrt{-1}]}\chi(\mathfrak{a}) q^{N(\mathfrak{a})} = -\sum_{a,\,b}a q^{a^2+b^2}, \] 但し$q=\exp(2\pi\sqrt{-1}z)$, $\mathfrak{a}$は$\mathbf{Z}[\sqrt{-1}]$の$0$でないイデアルを走り,また$a$, $b$は$a\equiv1\pmod{4}$, $b\equiv0\pmod{2}$を走る.

更に,このモジュラー形式は,$\eta$函数 \[ \eta(z) = q^{1/24}\prod_{n=1}^{\infty}(1-q^n), \] により, \[ f_E(z) = \eta(4z)^2\eta(8z)^2 \] と表示される.(重み2, レベル32のカスプ形式の空間が1次元である事から).

すると,考えている楕円曲線$E$の$a_p$($p$は素数)は,$f_E(z))$の$q^p$の係数に等しかったので,最終的に上の式の右辺を$q$展開した係数に等しいことがわかる.Jacobsthal和が,そして$x^2+y^2=p$の解が,上のような無限積の係数と関係付くのは大変ふしぎなことである.

参考文献は,D. Zagier, Elliptic Modular Forms and Their Appliation, in The 1-2-3 of Modular Forms, The 1-2-3 of Modular Forms: Lectures at a Summer School in Nordfjordeid, Norway (Universitext) §6.4, 並びに,橋本喜一朗先生の連載記事「数のジャングル・数論の迷宮」第15回「森の広場(スクエア):素数たちの饗宴(2)」,数学セミナー 2010年 09月号 [雑誌] ,である.

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