2013年5月14日火曜日

3項Goldbach予想,双子素数

午前中,自分のゼミの院生向けに,内輪の講義.勉強するきっかけになればと思い,代数的整数論から話題を選んでざっくりとお話しするという催しを始めた.

昼食を挟んで,もう一度,今度はM2のゼミだと思ったが,連絡の行き違いで今日ではないと思っていたという.仕方ないので延期して,午後は時間ができた.

3項Goldbach予想が解決されたらしい,というので,プレプリントarXiv:1305.2897)を見てみる.今回証明された(らしい)のは,「5以上のより真に大きい奇数は,三つの素数の和である」,という主張である.もう一つの,「2以上のより真に大きい偶数は,二つの素数の和である」のほうは未解決.(2013/05/18記:「以上」は等号を含むので訂正しました).

3項Goldbach予想は,既に1937年にI. M. Vinogradovによって,「ある正の定数 $C$ が存在して,$C$ より大きい奇数は三つの素数の和である」ことが証明されていた.このときは $C$ は不明だったが,その後,$C$ がいくつにとれるか,という線で研究が進んできた.

例えば2002年には,$C = e^{3100}$ ととれることが示されていた.したがって,$e^{3100}$ 以下の奇数について(それらはとにかく有限個だから),三つの素数の和である事を示せば,3項Goldbach予想を示したことになる.問題は,$e^{3100}$ が巨大すぎることである.

今回のHelfgottの結果は,$C=10^{30}$ ととれることを示した.そして,この $C$ より小さい奇数が三つの素数の和である事は,コンピュータで個別に確かめた(2013/05/18記:個々の数に対して逐一確かめたわけではないです.H.A. Helfgott, David J. Platt, Numerical Verification of the Ternary Goldbach Conjecture up to 8.875e30, http://arxiv.org/abs/1305.3062 参照).この $C$ より大きい奇数については,三つの素数の和である事を理論的に証明した.これにより3項Goldbach予想は証明された,ということらしい.

繰り返しになるが,「2以上の偶数は,二つの素数の和である」のほうは未解決である.T. TaoのGoogle Plusへの投稿なども参照.

さて偶然ながら,同じ日に同じ解析数論で,もう一つ大きな進展があったらしい.$(3, \, 5)$, $(5, \,7)$, $(11,\, 13)$ のように,$p$ も $p+2$ も素数であるような,言い換えると,差が2であるような素数のペアを双子素数という.「双子素数は無数にある」というのは古典的な未解決問題であった.

今回アナウンスされたのは,「差が70,000,000以下の,相異なる素数のペアが無数に存在する」という結果である.こちらはプレプリントなどは公開されていないようだ.情報源としては,著名なblog "Not Even Wrong" のこの記事が挙げられる.Natureにも記事がでている.

著者のZhangは,Annals of Mathからの査読報告を上記Natureの記者に見せているそうで,それによれば "We are very happy to strongly recommend acceptance of the paper for publication in the Annals." ということらしい.


数学はとどまっていない,という有名な台詞を思い出しますね.

0 件のコメント: