大学院の授業は、主に有限体の乗法群が巡回群であること。離散対数の定義、n冪剰余の取っ掛かりの部分。原始根の求め方、離散対数の求め方などアルゴリズミックな話は先送り。ElGaml暗号やDSAの話も、このくらいの予備知識でできるけど、時間の都合で割愛。
午後は4年生セミナ。群論の復習。来週から4名のうち2名が教育実習のため3週ほど不在になるので、その間は短い論文や読み物(Math. IntelligencerやAmer. math monthlyに掲載されたものなど)を読んでもらう予定である。
その内の1つとして、J. H. Silvermanの論説Taxicabs and sum of two cubesを配った。HardyとRamanujanとに関する有名な逸話があって、いわゆるタクシーのナンバープレート1729の話である。1729=10^3+9^3 = 12^3 + 1^3と、2つの3乗数の和に2通りに書ける最小の数だ、とRamanujanが喝破したという。他にこのような数が無いか探すことは、x^3+y^3=Aが複数の整数点を持つAを探すことと同じだということから、楕円曲線の有理点ないし整数点へと話を広げていくのが、Silvermanの論説。
セミナを解散した後で、これに関連する論文が無いか探していたところ、Ken Onoの論説RAMANUJAN, TAXICABS, BIRTHDATES, ZIPCODES, AND TWISTSも見つけた(リンクは同氏のweb pageで公開されているバージョン)。Ramanujanの別の仕事に、1729の並べ替えである2719が現れる。すなわち、二次型式x^2+y^2+10z^2により表されない奇数のうち最大なものが、2719だ、というところから、半整数重みの保型形式と志村対応などへと話を広げていく。
というのはまじめな数学の話。Ono氏の論説の前振りが愉快だった。RamanujanのLost notebookの編纂に尽力しているB. Berndtという数学者が居る。彼の一番下の娘が1972年生まれなんだそうで、これも1729の並べ替えになっている。「偶然なのか、それとも"Ramanujan family planning?"の例なのか?」。一人声を上げて笑ってしまった。
2 件のコメント:
私の車のナンバーは1729です。もちろん、HardyとRamanujanの例の数ですね。前の車の時から、引っ越しなどでナンバープレートを付け替えるたびにこのナンバーを選んでいるのですが、誰も気づいてくれません;_;
コメントありがとうございました>ateruiさん。
今は車のナンバーが選べるんですね。そこらへんから知らない私でした。
文中に引用したKen Onoの論文の末尾にあるのですが、Ramanujanの生没年は、
1887-1920 だそうです。
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