しかし,
考える楕円曲線を,
さて,
すると,Hasse-Weil
つまり,楕円曲線
(参考文献は,J. Silverman, Advanced Topics in the Arithmetic of Elliptic Curves (Graduate Texts in Mathematics)
初出時
初出時
2012年4月25日水曜日の「Jacobsthal和(3):mod 4で1の素数は2平方数の和」の記号を使って,有限体上の楕円曲線の,有限体の拡大体での有理点の個数を勘定する:
さて,有限体
つまり,Jacobsthal和は,
以上の準備のもとで,次はHasse-Weil のV章.
木曜日は各週で,北陸数論セミナ.今日は虚Abel体の相対類数の行列表示の話だった.話題のうちの一つが,S. Jakubec, On some new estimates for
奇素数
これまでも,虚Abel体の相対類数の行列表示は様々に与えられているが(そして今日のスピーカはその第一人者でもあるのだが), このように簡潔(両辺に余分な因子がなく,行列に明らかな対称性がある)ものは寡聞にして知らない.
例えば,
Jacobsthal和と,虚数乗法を持つ楕円曲線のFrobeniusのトレースとの関係を見る.
奇素数
この和は,
もう少し状況を一般化して,標数のV章を参照.)
次に,
すると,のII章,§15, ならびに,D. Cox, Primes of the Form x + ny: Fermat, Class Field Theory, and Complex Multiplication (Pure and Applied Mathematics: A Wiley Series of Texts, Monographs and Tracts)
の§14-C参照.)
さて,
昨日の,Jacobsthal和を使った2平方数和定理の証明をもう一つ,こちらはJacobsthalの学位論文の記述に近いものである.
証明だが,
さて,
次の和を考える:
詳細は,昨日もリンクしたJacobsthalの学位論文(1906年)の13頁付近か,D. Zagier, Elliptic Modular Forms and Their Appliation, in The 1-2-3 of Modular Forms: Lectures at a Summer School in Nordfjordeid, Norway (Universitext)の命題29を見て頂きたい.
Jacobsthal和は定義から明らかに,
素数
まず
より単純に,
さて
さて,
例えば,
Ernst Jacobsthal(1882--1965)はドイツに生まれ,ベルリン大学でG. Frobenius, H. Schwartz,I. Schurらの指導を受け,上に解説した結果を含む学位論文(1906年)を書いている.高木貞治がベルリン大学に留学したのが1898--1900年なので,それこそFrobeniusの講義などで同じ教室に居たりしていたら面白いが(その後,高木はゲッチンゲンのHilbertの元に赴き,「おまえはシュワルツの所から来たのであるからよく知っているだろう」などと,道ばたでレムニスケート函数についての口頭試問を受けたりするのである.「近世数学史談・数学雑談」の「回顧と展望」を参照).Jacobsthalはその後,第一次大戦前後の混乱(とナチの台頭)でノルウェーに脱出し,長年その地で教授職にあったらしい.以上はThe MacTutor History of Mathematics archiveの記述による.
後記(2012/04/23:0955):最後のMacTutorの名称を誤記していたのを訂正.
昨日導入したJacobi和を使うと,
まず上の記号で
例えば
昨日のIreland-Rosen, A Classical Introduction to Modern Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)に並んで,F. Lemmermeyer, Reciprocity Laws: From Euler to Eisenstein (Springer Monographs in Mathematics)
の6.2節を参考にした.特に上の結果は,同書の系6.6である.
素数
まず指標.
法
次にJacobi和を導入する.
さて,素数
例えば
以上については,Ireland-Rosen, A Classical Introduction to Modern Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)の8章をご覧頂きたい.
2元2次形式の理論を用いたLagrangeの証明を,Gaussが整理したもので,ガウス 整数論 (数学史叢書)の§182に載っている.Cohen, A Course in Computational Algebraic Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)
, Chap. 5, ならびに,ザギエ,数論入門―ゼータ関数と2次体
の2章も参照.
整係数2元2次形式とは,整数係数の2変数2次式の事で,
整数を成分とする
以下では
さて,整数
我々が考えていた問題は,素数
さて,Lagrangeにより,判別式
(現代風に言えば,虚2次体
さて,昨日使った事実
「素数の証明を与える.まずについて,ある が存在して,ある整数 について が成立」
一方で,
すると
なので
こういった話をするときに,どこまでの知識を仮定するのかをはっきりさせておいた方が良いかもしれない.素数を法とする原始根の存在と,冪剰余の定義,特に平方剰余と平方剰余記号の相互法則くらいまでだろうか.小野孝先生の「数論序説」1章から,連分数に関する事項を除いたくらいである.(群環体の基本的な言葉遣いは含む).あるいは,中島匠一先生の「代数と数論の基礎 (共立講座21世紀の数学)
」のやはり1章であろうか.
昨日まで述べてきたvan der Waerdenの定理を含む,より一般的な次の予想(現在では証明されている)がある:
「Erdős-Turan予想(On some sequences of integers, Journal of the London Mathematical Society 11 (4): 261-264)」
任意の正整数と正の実数 に対して,正整数 が存在して,もし なら, の任意の部 分集合 で, を満たすものは, 項からなる等差数列を 含む.
この主張からvan der Waerdenの定理を導くには,
Szemerédiの定理は,K. F. Rothによる
H. Furstenbergが1977年にエルゴート理論を用いる証明を発表した(それは先日の記事に挙げたM. Einsiedler and T. Ward, Ergodic Theory: With a View Towards Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)に解説されている).
更にT. Gowersが2001年に,実調和解析に基づく証明を与えた.A new proof of Szemerédi's theorem, GEOMETRIC AND FUNCTIONAL ANALYSIS
Volume 11, Number 3, 465-588. Gowersによる証明は
さて,以上の話とは少し毛色が変わるのだが,素数の分布の問題で,関連する重要な話題がある.Ben GreenとTelence Taoは2008年に,素数全体の集合上におけるSzemerédiの定理,と言うべきものを証明した(The primes contain
arbitrarily long arithmetic progressions, Volume 167 (2008), Issue 2, arXiv:math/0404188v6 のTheorem 1.2).すなわち
「を素数の集合で ここで は 以下の素数の個数,を満たすものとする.このとき は任 意の に対して,長さ の等差数列を無数に含む. 」
このGreenとTaoの論文については,小木曽啓示氏による,「混沌の中の秩序---素数列をめぐって」という素晴らしい解説があるので,そちらを是非ご覧頂きたい.
昨日までに述べた,van der Waerdenの定理
「任意の正整数
Graham-Rothschildの定理
「任意の正整数
は,つまるところ,十分長い区間
すると次は,
1970年代に,Solovayは
結局,上の論文でShelahは,Grahamが言うように
Shelahは最初,Solovayが言うように
原始帰納的関数やAckermann関数については,藤田さんの「なげやりアカデミア」に「原始帰納的函数とアッカーマン函数」という文書があり大変参考になる.
昨日に引き続き,Graham-Rothschildの定理の証明の続き.次の主張2により証明が完結すると同時に,特別な場合としてvan der Waerdenの定理も従う.
主張2:
証明:正整数
すると,或る
よって,
さて
Graham-Rothschildの定理の原論文は,Proceedings of AMSで公開されている.また,M. Einsiedler and T. Ward,
Ergodic Theory: With a View Towards Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)の7章冒頭にも分かりやすく解説されている.
主張1:
証明:正整数
9:00後記:TeXnicalな修正.